【銀魂】俺の隣のゆる医者さん【沖田総悟】

＊ ページ29

土方の号令で隊士達が現場から撤収していく。
無意識で重傷者探しなんてしちまってる辺り、すっかり向こうでの生活が染み付いてるらしい。
パッと見手術が必要なほどの重傷者は居ねェみてーだが、何人かは治療が必要だろう。


「A」

「おっけー。医務室、借りる」


俺が言わんとしてることは口にしなくてもあっさり伝わった。
多分Aも同じとこ見てたんだろう。
そう思ったら気恥ずかしくなると同時に心が通じ合ってるみてーで嬉しくなった。


「借りるっつーか、好きに改造しちまって良いぜィ。これからお前の仕事場になんだし」

「ホントに、いいの?」

「生活の面倒見てやるって約束しただろーが。それに真選組(うち)の医者なら給料(かね)良いし、何かあったらすぐ護ってやれるんでねィ。上にもちゃんと話通しといてやらァ」

「うん。ありがと、総悟くん」

「おい、早くしろ総悟!帰んぞ!!」

「へーい。…ったく、相変わらず騒がしい奴でィ」


いつの間にかすっかり撤収準備が整ったらしい。
土方のでけェ声が静かになった建物内に響いた。
近所迷惑も良いとこじゃねーか。

Aの荷物を片手に持ち、空いた手でAの手を握る。


「んじゃ、行くか」

「ん。案内、よろ」

「おぅ、任せとけ」


繋いだ手に感じる温もりが、Aが今此処に居るって実感を与えてくれる。

夢なんかじゃねェ。
見知らぬ世界で出逢ったゆる医者、八月朔日Aは間違いなく江戸(ここ)に居る。
そしてこれからもずっと、俺の隣(ここ)に居続ける。


「これからも、よろしく。総悟くん」

「そりゃ、こっちの台詞でィ」




〜END〜

〜あとがき〜→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す