検索窓
今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:777,506 hit

四十八 ページ3

『母に会わせろ』





連絡もなしに蒼社の家に帰れば、いつかと同じように非術師共が私の行手を阻む。



以前と違ったのは、私が術式を使う前に道を譲ったこと。



母がいると聞かされていた部屋の前にいたのは母の付き人で、彼女は祈るように手を組んでいた。



私に気付くと彼女は驚いた顔をして。





女中「A様?どうしてこちらに?」




『…母に会ってもいいですか』





感情のこもっていない自分の声は、人形にぴったりだと自嘲する笑みが零れた。





女中「しかし入れば紅葉様は死ぬと私は聞いておりますし、意識もまだ戻られてはいないと…」





結局付き人も母の姿を実際に見ていたわけではなかった。



恐らくは母の解呪をしているであろう呪術師にそう伝えるよう言われていただけ。





爺「…何をしているA。帰ってくるとは聞いていないぞ」




『私、決めました。母が死のうと私はこの襖を開ける』




爺「は…?」





襖に手をかけた私と、それを見て動揺した男。





爺「やめろ!!!」





彼がそう叫んだ時にはもう襖は開いていた。





女中「紅葉様……は?」





部屋の中には母の姿はなく、あるのは謎の札ばかり。



これで私の呪力感知を鈍らせ、母がこの部屋にいるかのように思わせた。





『母は』





冷え切った私の声に男は後退る。





爺「紅葉は死ん『いつ』10年前にはもう…」




『そう…発燭』





男は叫ぶことなく倒れた。



10年前にはもう母は死んでいた。



甚爾が死んで3年も経っていないうちに。





女中「A様…申し訳ありません…私が気付けていれば」





そう言った母の付き人は泣いていた。



彼女もきっと母のことが好きだった筈だ。





『貴方は悪くないです。こんなの普通は気付かない』





傑君の言っていた通り、情報を隠蔽することにだけは長けている。





『…貴方は今すぐこの屋敷から出てください』




女中「…え?」




『母のことを好きでいてくれた貴方を巻き込みたくはないので』





私がこれから何をしようとしているか察した彼女は頷いた。



A様もどうかお気を付けて、と最後まで優しかった彼女の後ろ姿を見送って。





『……ごめんね、お母さん』





こんな親不孝な娘で。

四十九→←四十七



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (1059 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2005人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 伏黒恵
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613  
作成日時:2020年12月1日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。