四十七 ページ2
『それで?誰だよ、お前』
私の正面に座る男は、私に呼び止められてから今に至るまでずっと笑みを浮かべている。
「誰なんて酷いな。告白した相手のことを忘れるなんて」
『忘れたんじゃない。…お前は“違う”って言ってるの。お前は“傑君”じゃない』
一層笑みを深めて、男はそう思った理由を教えてくれと腕を組んで背凭れに体重を預けた。
『力のない、上の立場の人間に媚び諂う家に生まれた人間がどう育つか知ってる?』
夏油?「どうなるんだい?」
『人の顔色、表情に敏感な人間に育つんだよ。私は昔から自分の表情を作るのは得意だし、表情から何を考えているか見抜くのも得意』
五条悟という例外を除けば。
『傑君はそういう笑い方しない。…あと彼はあの日確かに死んだ』
現場にいた私が死んだと断言できるほどの最期だった。
忘れるはずもない。
夏油?「そこまでいくと気持ち悪いな、蒼社の人間も」
『他人だって認めるんだ』
夏油?「認めるよ。…ただ、私が君の前に姿を現したのはそういう話をする為じゃない」
『……力を貸せって?』
夏油?「話が早くて助かるよ」
彼は間違いなく呪術師の敵。
そんな彼が私に攻撃もせず、話をする理由なんてそれぐらいしかない。
『私は呪詛師になるつもりはないと前にも言ったはずだけど』
夏油?「そうだね。何せ君の母親は人質だ。君が逆らった時に手綱を握るための」
傑君ではないのに母の情報を知っているのは何故?
夏油?「でもその母親がとっくに死んでいたら?」
『………は?』
夏油?「もう一度言うよ。君の母親、蒼社紅葉はもう死んでいる」
『何……言って…?』
母が死んでる?
そんな筈ない。
母の付き人は意識は戻っていないと言ってはいても死んだとは一言も…
夏油「嘘だと思うかい?なら自分の目で確かめてくればいい。…近々また会おう。その時は私ではなく代理の呪霊に会ってもらうことになるけどね」
傑君の姿をした何者かはそのまま席を立ち、店を出て行った。
『……っ!!』
あいつの嘘だと、私を動揺させる為の嘘に過ぎないと信じて私は蒼社の家に向かう。
どうかこの胸騒ぎが杞憂でありますようにと願った。
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よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年12月1日 16時