逃げたいぶりっ子VS逃したくない最強《呪術廻戦》

夏油ルート1 ページ27

夏油side




Aを捜し始めてから二時間以上経っても、彼女を見つけることが出来ずにいた。




悟からの連絡もないということは恐らく向こうも同じ状況なんだろう。




もしものことがあれば私はもう踏み止まってはいられない。





・





2007年___





『はーい。夏油君が大好きなAちゃんだよ〜』




夏油「………」





携帯から聞こえてくる陽気な声にその日は___正確に言えば理子ちゃんと黒井さんが死んでしまったあの日と今日だけはいつものような返しが出来なかった。





『…何かあった？』





以前にも同じようなことがあったからかAはボリュームを落としてそう聞いてくる。




悟らせるつもりはなかったというのに、自分の心の弱さに呆れた。





夏油「灰原が……死んだ」




『…確か後輩君だっけ？夏油君を慕ってたっていう』




夏油「……Aは………いや…悪い。何もない」





Aはもう呪術師ではないし、自分の思っていることを吐露したところで彼女には迷惑にしかならないだろうと口を閉ざす。





『そういうのぉ〜良くないと思うんすよねぇ』




夏油「え…？」




『夏油君が話したくないっていう理由なら話さなくてもいいけどさ、迷惑が掛かりそうだとかそういう理由で話さないのは良くない。ひっじょーに良くないよ』





“心の友と書いてしんゆうでしょ、私達って”という言葉に抑え込んでいた気持ちやら考えやらが自身の口から零れた。





夏油「…私達は誰の為に呪霊を祓っているんだろうね。命を賭して守ってきたものに…それだけの価値が本当にあるのか…？」




『というと…？』




夏油「術師から呪霊は生まれない。呪霊が生まれるのは非術師からだけだ」





それは先日会った特級術師、九十九由基から聞いた話であるから信憑性は十分あると言える。





夏油「命を懸けて非術師を守っても、非術師がいる限り呪霊は生まれ続ける。この先にはきっと終わりなんてない。……ただ仲間の屍が増えるだけだ」





あの日の光景が脳裏に浮かぶ度に分からなくなる。




非術師に守る価値があるのかどうか。命を賭けるに値する存在なのかどうか。

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