逃げたいぶりっ子VS逃したくない最強《呪術廻戦》

夏油ルート2 ページ28

夏油side





『私って馬鹿だからさぁ…夏油君が悩んでること全部は分かんないし、望む答えをあげることも出来ない。…ただ言えることは』





Aは一度言葉を切り、改めて言った。





『私はいつもの夏油君が好きなんだ』




夏油「……A…」




『非術師を守ることは当たり前だって私に自信持って話してくれた時あったじゃん？その時凄いなって、かっこいいなって思ったんだよね』





“本当は言うつもりなかったんだけど”と少し恥ずかしそうにAは言って。





『非術師側になった私が何言ってんだって話だけど…それでも私は夏油君が非術師を殺すところなんて見たくない。夏油君にはずっと五条君と笑ってて欲しい』





…本当に。呪術師を辞めた癖に何を言っているんだと、Aは何も知らないからそんなことが言えるんだろと幾らでも言える筈なのに、私は何も言えない。





『辛いことがあったら私に言ってくれていいし、八つ当たりしてくれても構わない。…だから呪詛師にだけはならないでよ、夏油君』




夏油「Aは大嘘つきだな」




『へ？』




夏油「私が何に悩んでいるのか分からないなんて嘘だろう？でなければ非術師を殺すところなんて見たくないとか、呪詛師にならないでとか言えない筈だ」




『いやそれは本当に最悪を想定した場合で』




夏油「…ありがとうA」





私の言葉に対する反応は数秒返って来なかった。




その間が気不味いとは思わなかったけれど、私が礼を言うことがそこまで珍しいのかと多少不服に思った。





『…おっ…お礼！？なんで！？』




夏油「話を聞いてくれたからね。…非術師に対する考えとか諸々がすぐさま変わるわけではないけど、それでも大分楽になった」




『そっか。楽になったなら良かったよ。ごめんね。非術師を殺さないでとか呪詛師にならないでとか我が儘しか言ってないね、私。話を聞いてた筈が、私の我が儘を夏油君に聞いてもらってるって…なんでこうなったんだ…？』




夏油「それはAが馬鹿だから」




『まーたそういうこと言うー』





確かにAが私に言ったことは正論でもないし、説得でもない。




ただの希望であって我が儘だ。




でもその我が儘があったからこそ、私は踏み止まれた。

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