三十三* ページ34
雅side
二年前と変わらない屋敷に懐かしさを感じる。目の前に座る悟さんも、見た目は二年前と変わっていないように思えた。
二年前私が愛した人。そして今も愛したまま忘れられない人。
私は罪深い人間だとこの二年間で分かった。
五条「…どうして何も言わずにいなくなった」
彼の声は低くて、怒っているのだということはすぐに分かった。それも当たり前だと思う。
『覚悟が揺らぐと思ったんです』
五条「覚悟?」
『…隣街の殿方に嫁ぐ覚悟です』
五条「は………?」
二年前、隣街に行くことを悟さんに言っていれば彼はきっと私を止めたと思う。そして私は悟さんの静止を振り切ることなんて出来ないから街に止まった筈だ。
街に止まっていれば、今も私は悟さんの傍にいたかもしれない。彼の幸せを奪って。
『悟さん言ったじゃないですか。私が一人でも大丈夫だと確信するまでは結婚なんてしないって』
二年前の彼の言葉はどれも鮮明に覚えている。彼のことを忘れられなかったというのに私は他の殿方と結ばれた罪深い人間。
でも彼が幸せになれるのなら私は罪に塗れてもいい。
『もう大丈夫です。私はもう悟さんに守ってもらわなくても生きていけます。だから悟さん、幸せになってください』
私にたくさんの幸せをくれた貴方には私よりも幸せになって欲しいから。
五条「…その男のこと、好きなの?」
いいえ。私が好きなのはずっと貴方です。これはきっと一生変わらないけれど、彼にそんなことを言える筈もなく、私は少しでも信憑性を持たせるために笑う。
『はい、愛しています。とても良い方で…先日、その、子がいることも分かりました』
五条「………そう」
少しの沈黙の後、悟さんは俯いたまま小さな声で言った。そんな彼の様子が引っ掛かって、首を傾げる。
『悟さん?』
五条「…雅の人間はどういう形であれ、僕を不幸にするんだね」
『え……?何を言っ……!?』
どさりと私の背後に積んであった書籍が崩れる音がした。
視界に映るのは悟さんとこの部屋の天井。
『悟…さん…?ねぇ…?どうしたんですか…?』
二年前にも押し倒されたことがあったのに、あの頃とは違って私の声は震えていた。
五条「…幸せになれ?今更どの口が言ってんだよ。なれるわけないだろ」
病に侵されていた頃と同じような寒気がした。
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?(プロフ) - 今までで1番好きなお話に出会えて本当に幸せですㅠㅠ感情移入し過ぎて自分までもが懐かしい気分になってしまい不思議な感覚でした笑主様の文章力ありすぎて考察もしやすかったです、がち尊敬です!素敵なお話ありがとうございました🥹💗💗 (3月17日 7時) (レス) id: 0539db3d38 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» ありがとうございます…!次回作も楽しみにしていただければ…!!(o^^o) (2022年1月26日 17時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - 完結おめでとうございます!!!名作すぎるので何度も読み返します笑次回作も楽しみです!! (2022年1月26日 15時) (レス) @page42 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» えねごりらさんコメントありがとうございました…おかげさまで変な終わり方にはなりましたが完結できました…!本当励みになっていたので心からの感謝を申し上げますッ!! (2022年1月26日 1時) (レス) @page42 id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - すれ違ってる…切ないが溢れ出てます!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!更新お疲れ様です(о´∀`о) (2022年1月25日 21時) (レス) @page35 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2022年1月17日 20時