☆∴.･*.･いのちのうた∴.･*.･:☆Masaki Aiba・2017年ハピバ企画 (ページ5)

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５★残酷な宣告ページ5

「ただーいまー…」

真っ暗な家に帰り着いて、
服のまま寝室のベッドに倒れ込んだ。
指１本動かせないまま天井を見つめてたら、
病院での出来事が頭の中でぐるぐる回りだした。

*

『残念ですが…今回この妊娠を継続することは、
困難だと言わざるを得ません』

なんでかな。
宮本先生の言うことはいっつも頭に入ってこない。
前の時も、それにほら今だって…

(どういうこと…？)

カンファレンスルームで向き合って座って、
呆然としたままの俺に先生がスッと小さな紙を差し出した。

(なに…)

それは白黒の砂嵐みたいな扇形の画面を印刷したもので、
真ん中らへんに２つ、黒い点が写ってる。

『エコー写真です』

『…は？』

いきなりそんなこと言われても全然分かんなくて、
混乱したままの俺に先生が丁寧に説明してくれた。

『この黒い点が胎芽です』

タイガ…？
って思ったことが顔に出ちゃってたのか、
先生はこれが赤ちゃんのもとだって教えてくれた。
もう少し成長すると心臓が動き出して、
胎児って呼ばれるようになるんだって。

『はぁ…えっ、でもこれ２つ？ …ありますけど』

『より精密な検査が必要になりますが、
今回は双生児…双子、という可能性が高いです』

『え…？』

１コずつの話は分かる。
Aさんのお腹には赤ちゃんがいて、
それでその赤ちゃんは２人で…

(でもそれがなんで最初の話と結びつくんだよ？)

なんて言ったらいいか分かんない。
黙ったまま写真を見つめてたら、

『本日奥様が倒れられたのは…』

先生の方から話を切り出してくれた。
すげぇざっくりまとめると、
Aさんが今日倒れたのはひどい貧血だったってこと。

『以前から貧血気味でしたか？』

『あ、はい…』

先生はそれからゆっくり説明してくれた。
病気の治療自体はそんなに難しくないこと、
けど今ここまで症状をひどくしてるのはお腹に赤ちゃんがいるからで、
このまま出産までつなげてくとAさんの体に負担がかかりすぎるから、

『それで…だからって、』

『残念ですが』

『諦めろって、ことですか』

頭がガンガンして、俯いた視界が一気にぼやけた。
Aさんも俺もすごく楽しみにしてたのに。
前回の１件以降事務所とかにも話してちゃんと許可もらって、
じゃああとはもっかい赤ちゃんが来てくれるの待つだけだねって…

『どうしても、無理なんですか』

顔を上げた先の先生は、
険しい表情で黙ったままだった。