33話 ページ39
「その後忍田から、ボーダー入隊を勧められて、今に至ります」
私はそう言って、一息ついた。
初めてだった、忍田さん以外の人に自分の過去を語ることは。
「そっか、分かった。ありがとな、話してくれて」
そう言って迅さんは部屋を出ようとした。
部屋を出る直前に、
「あ、そうそう。明日から忙しくなるからな。朝は早いから、ゆっくり休めよ」
それだけ言って、迅さんは部屋から出ていった。
最後まで迅さんの心の中で、私を恐れたり、気味悪がったりはしなかった。
それだけで私はとても安心した。
折角親しい人が出来たのに、離れて行ってしまうということがとても辛かったから。
本当に、私は良い所に来たのだなと改めて感じた。
そして、私は再びベットに横になった。
山城 ミキ・・・
彼女の姿が私の脳裏に過ぎる。
過去を思い出すといつも彼女が私の脳裏に過ぎる。
彼女の優しい笑顔、明るい言動、そして彼女の最後も全てが。
「はあ、やっぱり過去なんて触れるものじゃないな・・・」
私の目から、涙が流れていた。
もう寝よう。
明日は早いみたいだし、それにもう何もする気力がない。
部屋の電気を消し、私は目を閉じた。
その夜の夢も、ろくなものでは無かった。
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作者名:panrou x他1人 | 作成日時:2018年10月24日 1時