28話 (過去) ページ33
焼却炉自体は、山の中にあるには結構大きなもので、深く、穴も人一人が飛び降りるには十分な大きさであった。
「ねえ、ミキも私と同じようにいじめられていたの・・・？」
私の訊ねた言葉に、ミキは少し驚いた表情をするが、ミキはすぐに笑顔を作り「そうだよ」と答える。
この状況下でようやく分かった。
こんな顔になるまで暴力を振るわれて、死の間際であるにもかかわらず、何故かいつもと変わらぬ明るい、純粋な心。
理由は簡単、彼女が「私を心配させまい」と無意識的に思っていたからである。
そうすることによって、彼女の心は、私が心を読んでも、いつもと変わらぬ明るくて、純粋な心に保っていたのだ。
しかし、そんな心とは裏腹に彼女の本当の心は
いつも泣いていたのだろう。
そもそもの私の考えが馬鹿だったのだ。
学校内で彼女と会わなければ、彼女はいじめられずに済む？
そんな、ハズがある訳ない。彼奴らならば、私と彼女が仲良くしていることくらい、把握していたはずだ。
それに、私をとても思ってくれている彼女の事だ、私の事でなくとも、彼女との間に何かしらあって、いじめられ始めたとも考えられる。
私はそれらを疑おうとも思わなかった。
そんな私がとても憎かった。
「・・・真衣、自分を責めないで」
突然、彼女は私の心を見透かしたように、話しかけてきた。
「私は真衣と居て、何一つ後悔なんてしてないよ。だって、一緒に居てとても楽しかったもん」
そう、明るい笑顔で話す彼女の言葉でいつの間にか私は涙を流していた。
彼女の心は依然として、変わらぬままだ。
「本当はもっと真衣と一緒に居たかった。それに、私にとっても真衣は初めての友達だったからね。だから、今からお別れするのは本当に辛いと思ってる」
「いや・・・嫌！」
彼女の心は変わらぬままだった。
私はすぐさま止めに入りに、彼女の元へ走り出す。
しかし、間に合わず既に彼女は私の手の届かないところまで、落ちていた。
「さようなら、真衣。大好きだよ、私よ分まで生きて・・・」
「ミキ・・・やめて・・・ダメ！嫌！」
その直後、焼却炉からは何かが落ちる音がして、その数秒後にはこの世のものとは思えないほどの悲鳴が聞こえた。
外から、焼却炉の中の様子を見ることも出来たが、私はそんな気になれず、ただ唖然としていることしか出来なかった。
数分後には、静寂に包まれた。
彼女の心は死ぬまで変わらぬままだった。
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作者名：panrou x他1人 | 作成日時：2018年10月24日 1時
