22話 ページ25
私はようやく現実へと戻ることが出来た。
引き戻してくれたのは、今、私を心配そうに見つめている迅さんだった。
私が目を覚ますなり、頬を緩めて、「良かった」と安心した顔で呟いた。
この状況、以前もあったな・・・
よくよく見てみると、迅さんの手が私の腕を掴んでおり、かなり激しく揺らされて起こされたみたいだ。
その証拠に、激しく揺らされた後の腕が少し赤くなっていた。
相当、強くしなければ目が覚めなかったらしい。
「過去の夢・・・か？」
唐突に言われた迅さんの言葉に、私の心臓が跳ね上がる。
「何で、分かったんですか？」
「忍田さんから聞いたんだよ。忍田さんに真衣が今日から玉狛を寝床にするって言ったら、もしかしたら真衣が過去の夢を見て魘されるかも知れないから心配してやれってさ」
成程、確かに私の過去を知っている忍田さんから聞いたのなら納得だ。
それから、少し沈黙の時間が流れる。
しかし、その間の迅さんの心の中の葛藤が私には聞こえていた。
「私の過去・・・知りたいんですか？」
次は私の言葉に迅さんが驚いた。
「・・・ああ。聞かせて欲しい、真衣の過去を。別にそれがどんな過去であっても、俺は真衣を嫌ったり、畏怖したりはしない。ただ、真衣のその悪夢が過去のものである事は確かだ。その辛い過去が今も尚、真衣の足枷となっている。完全にその足枷が取れなくとも、和らげる事くらい、俺は真衣にしてやりたいと思っただけだ」
その、迅さんの言葉に嘘偽りは一つも無かった。
私を心配してくれている心が全てだった。
正直、私は他人に自分の過去を打ち明けたくは無かった。
その過去は私にとってはとても辛いものだったから・・・
だが、これ以上心配させたくないし、それに、この辛さを和らげてくれるならば話してもいいかなと感じた。
「分かりました。誰にも話さないで下さいよ。そして、私の前から消えないでくださいよ・・・」
そういった後、私は迅さんの反応を見る。
「ああ、分かっているよ。俺はこの事を誰にも話さないし、お前の前から消えたりなんてしない。約束するよ」
やはり、迅さんの言葉に嘘偽りは一つも無かった。
そして私は、自分の過去をぽつりぽつりと打ち明け始めるのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：panrou x他1人 | 作成日時：2018年10月24日 1時
