14話 ページ17
結局その後は、私はやはり1本も取れることなく、ブースを後にする。
「お疲れ、真衣」
そう言って、冷たい水の入ったペットボトルを私に渡す。
「あ、ありがとうございます」
忍田さんから水を受け取り、それをすぐ様飲み始める。
乾いた喉が、潤う。
「ひゃー、やっぱし忍田本部長強いな」
「本当、でも早川って言う人もすごく強かったよね」
「ねー。あれで本当に私たちと同じB級なの？」
「分かんねーよ。もしかしたら、もうA級だったりして」
等と、そんな声が遠くから聞こえる。
心の声も聞いてみると、殆どが私たちに対して良い印象を持っていたが、中にはそうで無い者もいた。
まあ、それらは他人が勝手に決めた評価。
良かろうが、悪かろうが、私の実力を決めるものでは無い。
それに、私自身自分の実力など完全に分かるはずも無いのだ。
それが、他人に分かるはずが無い。
「しかし、半年前に比べて強くなっているな」
「そりゃあ、色んな人にランク戦を頼まれますしね。特に太刀川さんはむっちゃ付き合わされます」
「慶の奴、そんなことばかりしてるから単位ヤバいのか・・・？」
「恐らく」
私は即答して、その言葉に忍田さんは頭を抱える。
余程、太刀川さんの単位について頭を悩ませているのだろう。
少し悪い気がしたから、これからは太刀川さんの声にはより一層注意して、ランク戦を避けるとしよう。
まあ、しばらくの間は問題ないけど。
すると、忍田さんは私に気まずそうに話しかける。
「なあ、真衣・・・お前はやっぱり学校に行く気は無いのか？」
学校と言う言葉に、私は少し心が揺れるのを感じた。
学校か・・・
正直いい思い出なんて殆ど無かったな。
複雑な時期の心というものは、常に揺れているものだ。
特に、思春期の負の感情というものは私には耐え難いものだ。
そんな心が、常に大量に蠢いている学校。
ボリュームは下げれるとはいえ、私には苦痛でしか無かった。
「ごめんなさい・・・私にはまだやっぱり・・・」
少し悲しそうな顔をすると、忍田さんは焦って、
「ああ、すまない！確かにあれ程辛い思いをしたもんな。それじゃあ、私は行くとするよ。また、学校に行きたいと思ったらまた来てくれ。防衛任務頑張れよ」
そう言うと、バツが悪そうに忍田さんはこの場を去っていった。
「はあ、悪いことしちゃったな・・・」
私の心の中は申し訳ない気持ちで一杯になった。
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作者名：panrou x他1人 | 作成日時：2018年10月24日 1時
