偽×偽＝恋？ 【赤司征十郎】

ニセモノ35 ページ36

赤司視点









Aに別れを告げられて早3日。
今日は彼女がお見合いをする日だ。









「虹村さん、いっそ俺を殺してください……」









部室で絶賛お着替え中の虹村さんにそう言った。









「はぁっ！？物騒なこと言ってんなよ赤司！！」









そう言って背中をバシンと叩かれる。
地味に痛い……。








「そんなに落ち込むんだったら何で引き止めなかったんだよ」


「泣いている彼女が電灯のライトに照らされて綺麗だったんです」


「知るかアホ」









そんでキモいな、と付け加えられる。
何気に酷いです、虹村さん。









「何がきっかけでこうなったんだ？」


「彼女がお見合いするのを引き止めなかったからです」


「いや引き止めろよ」


「だって引き止めたら」


「アイツ、引き止めて欲しかったんじゃねーの」









その言葉に言いかけていた言葉を飲み込む。









「昔のお前だったら絶対引き止めてただろ、行くなって」









地味に妬きながらよ、と苦笑いする虹村さん。
確かに、引き止めていた。
俺がいるのに何故お見合いなんてする必要がある、なんて言って。








「ぶは、お前って恋愛になると奥手なんだな」


「奥手……？」


「おう、だってこんなに恋愛で落ち込んでるお前なんて、初めて見たしよ」


「そう、でしょうか」








そう言えば、こんなに落ち込んだのは初めてかもしれない。








「お前、どっかで怖がってんだろ」


「は、」


「アイツとの関係が壊れることを」


「っ！！」


「だから引き止められなかった。アイツに嫌われてしまうのが怖かったから」








虹村さんは目を鋭くして違うか？と付け足す。
その言葉に心臓が大きく跳ねた。








そうか、俺は、何処かで怖がっていたのか。
彼女との、Aとの関係が壊れることを。









「ま、」


「…？」


「アイツが帰って来たら謝罪の一つでもして、抱き締めてやれよ本音全部さらけ出してよ」









そう言ってニカッと笑う虹村さん。
これは遠回しに、逃げるなって言われてるな。








「ありがとうございます、虹村さん」









虹村さんにお礼を言った後、Aに連絡するべく、携帯を開いた。

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