偽×偽＝恋？ 【赤司征十郎】

ニセモノ26 ページ27

夢を見ていた。
凄く幸せな夢。
まだ小学生3.4年の頃の。



当時はまだお母さんも生きていて、家族3人で幸せな日々を送っていた。







『おかあさんとおとうさんはいつもなかよしだね！』


「そうよ、だってお母さんはお父さんが大好きだもの」


「ははっ」







お母さんは嬉しそうにお父さんは恥ずかしそうに笑った。








『だいすき？それってなに？』








幼い私の素朴な疑問にお母さんは柔らかい表情で答えた。








「大好きっていうのは、好きよりもっと上」


『もっと、うえ？』


「そう、もっと上。大好きになるとその人が凄く大事になるの」








そうなんだ、と納得している私の髪を撫でるお母さん。
私を愛おしそうな目で見る。









「貴女にもいつか、そう思える人がきっと現れるわ」









最後の言葉は幼い私には理解できなかった。









でも、もう少しで分かりそうなんだ。
あの時のお母さんの言葉の意味が。








ふと、視界が開けて。
その端っこに鮮やかな赤が映った。
ここに居るはずのないあの人の髪が。




あぁ、そういう事。
これも夢なのね。
私が彼への感情の正体を知りたいと強く願ったから。
だから夢にまで出てきてしまったんだ。







それに、膝枕なんかされてるし。
絶対夢だね。確信した。









夢なら、何しても良いよね？
この気持ちの正体を知りたい。
そう思っていたら彼が私の名前を呼んだ。








「A」


『……』








彼の呼び掛けには答えず、無言で彼の頬に手をやった。







「ふふ、何だい？」








彼が優しく微笑む。
この笑顔、好きだなぁ。
鮮やかな赤い髪も澄んだ赤い瞳も。
意地悪だけど、優しくて。
この数日間で全部が、大好きになった。






あぁ、この気持ちがお母さんの言っていたことなのかな。
好きよりもっと上で、大事にしたい。








「……A？」


『赤司くん』








彼の名前を呼んで、グッと身体を起こす。
何かいいかけた彼の口に自分の口を重ねて。






「っ！？」






やっぱり、お母さんのいう大好きの意味は私のちっぽけな脳みそじゃ分からない。
でも、これだけは分かったんだ。






________________『赤司くんが、好き』








驚いた顔をした赤司くんがぼやけていく。
…そう言えば、夢なのに唇の感触がやけにリアルだったな。





そんなバカみたいな考えを最後に、私の意識は途切れた。

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