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きっかけは簡単。僕は社長好みの男だったらしい。
はっきりした顔立ちと、高低に特徴はないけどどこか色気のある声がいい、仕草がそそられるって言われた事がある。
自分の顔がイケメンな方であることは、人生を歩む中で察していたけど、声や仕草までは自覚ないし、そもそもその褒め言葉は自分を性的対象として見た上でのものだって、当時14歳の僕は既に気づいてた。
現在24歳。この10年、ずっと僕は社長の「愛人」だった。社長は既婚で子どももいるけど、僕と不倫してたってことだ。
最初はかなり嫌だった。そういう目で見られていたことも、いやらしい手つきで触れられることも。だからずっとキス以上のことはしなかった。
だけどある日、社長からとある言葉が出た。その時は18歳だったか。もう出会った頃とは随分変わったというのに、まだ社長は僕と関係を続けていた。
数年使ってきた断り文句を突きつけ帰るはずだった。
「ねえ、真。デビューする気はないの?」
「デビュー……?誰と……」
「研修生に相沢肇っているだろ。あの子と二人でデビューするんだ。」
当時の肇は研修生の中でも目立つ男だった。キリッとした顔立ちとストイックな性格。歌もダンスもビジュアルもパーフェクト。
研修生には色んな年齢の人がいるけど、その中間くらいの年齢の肇を誰もが尊敬し、憧れてた。
次のデビューは相沢肇だと、皆がそう言って、そのポテンシャルから皆が肇とデビューしたがった。
そして僕もその、一人だった。
「相沢と……」
ごくり、と唾を飲み込んだ。
何より肇は歌が一際上手くて、僕は歌うことが好きだった。彼の歌にハモリを入れたい。彼と同じグループになりたいと思って練習を頑張っていた。
「ああ、それから……君達には優先して仕事を回すよ。コネってやつでね。どうだい?自分と、これからパートナーになる肇くんのためにも。」
「……っ、いいです」
必死に絞り出した言葉。一度は理性が勝ったのだ。社長もやっぱりだめかあ。と普通に笑っていた。
自分の身体で肇を買う、ということではないか?そう思った僕は断った。何のために僕が努力してきたのか、わからなくなりそうだったから。
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作者名:Me | 作成日時:2021年9月23日 18時