パルファムの夢【BLオリジナル】 (ページ5)

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「ﾁｯ、誰だよそんなこと言い出したやつ……」

真はそんなことしない。というか、どうせ社長に気に入られたいのに無理だった奴らの妬みに決まってる。
……もしかすると、それもあって、真は今日の社長との予定も本当は行きたくなかったのではないか。噂がこれ以上広がらないように、俺に影響がないように……真なりの精一杯な対応を、俺は、噂を立てた奴らと同様に"くだらない妬み"で無碍にしてしまったんだ。

「肇さんは……ご存知ではなかったんですね。」

「知ってたら今頃噂したやつ全員シバいてる」

「あはは……」

マネの苦笑と同時に家に着く。明日はオフで、明後日は昼からラジオの収録。スケジュールの再確認をした後に車から降りた。

「お疲れ様です」

「ん、お疲れ。」

その後は一人反省会。オートロックマンションの鍵を開けて、自宅に入るなりキッチンを抜けてベッドに体を預ける。
時間は午後7時。そういえば今日は真が出た特番の放送日だ……でも、感情がドン底まで落ちていた今日はもう何をする気も起きなかった。そのまま穏やかな微睡みの中、今度真に会ったらどう声をかけようか考えていた。

午前1時。窓の外では雨音が響く。すっかり寝てしまっていて、中途半端な時間に起きてしまった。とりあえずシャワーでも浴びて何か軽く食べようと起き上がると、スマホが震えた。
メールやラインが届いた訳ではなく、長時間鳴り続けていたので電話が来たのだと察す。

相手は真だった。

「……真？」

画面をスワイプして電話に出る。電話越しに雨の音が聞こえた。こいつ、外にいるのか……？

「は、はじ……っ、はじめ……！」

「こんな時間にどうしたんだよ、今外？」

「……はじめの……っ、マンションの前……」

「は？」

とりあえず部屋を出て、エントランスに向かうと確かに真は外にいた。傘もささずにずぶ濡れで。

「お前……こんな時間にそんなカッコで、どうし＿＿」

言い切る前に真は俺の胸にとびこんだ。全身ぐっしょりと濡れていて、びしゃびしゃで。
けれど肩を震わせて、押し殺したように出てくる嗚咽が彼が泣いていることを俺に伝えていた。

彼の心の雨音が、俺にようやく届いていた。