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仕事の愚痴を挟みつつも、最近のことについて話していた。この前スタッフと飯を食いに行ったこと、そこでのご飯が美味しかったこと、新しい仕事が不安なこと。
真の「相方との時間が欲しい」が如何に重要だったかを思い知る。
フェアビアンカはテレビでは半ば「イチャイチャ」を売りにはしているけど、実際はこんな感じで、落ち着いた関係を数年保っている。
だから、余計に真が春を売っているなんて考え難くて。真面目なこいつが、社長とみだらな関係に及ぶだろうか。
「ところでだけど、社長とよくメシ食う時は何の話してんの」
何の気なしに聞いてみた。
頻繁な呼び出しと約束の中、二人は何の話をしているかがそれとなく気になったからだ。
仕事の話なら俺も呼ぶはずだし、そうでなくても後々真から何かしらの報告があるだろう。でも彼から聞くのはいつも社長との約束があることだけで。
問いかけられた真はんふふ、と笑ってこちらを見た。
「なんだと思う?」
「はあ?わからないから聞いてんじゃん」
「そーじゃなくて、予想してみてよ。」
予想……?
仕事の話という候補はさっき消えた。そしたらプライベートな話?社長と真は結構仲が良いのだろうか。一応立場上、敬語は使い続けるけど。
そういえば真の趣味、あんまり知らなかったな。社長と一緒なのだろうか。
「趣味の話とか?」
「うん、まあそんな感じ。」
「真の趣味、なんだっけ。」
「今は舞台鑑賞。ミュージカルを見るのが好きなんだ。いつかは僕もやりたいな……」
「ん、いいじゃん。応援してるよ。」
「……フェアビアンカは?」
「えぇ……両立してけばいいじゃん。普通のアイドルグループだって、ソロ活動はやってくもんだろ。俺は特に予定ないけど……活動の場を広げるのはいい事じゃん。」
そう言うと、真は不服そうにアイスピックで氷を割った。んー、と唸りながらうつ伏せる。
「どうしたの、お前」
「……僕は、一緒にミュージカル出たいな。フェアビアンカとして活動したいんだ、ふたりで……」
「なら最初からそう言えよな。フェアビアンカは?じゃなくてさ。二人でいつか出ような、ミュージカル。」
うん……と小さく頷いた。
おかしいな、別に酒は弱いほうじゃなかったと思うけど。今日の真は甘えてくるような感じがする。
同い年なのに、昔から兄貴っぽかった真のそれに満更でもなく思いながら、真が握ったグラスにカチン、と自分のグラスを当てた。
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作者名:Me | 作成日時:2021年9月23日 18時