3.平等 ページ11
土砂降りの中、ここまで歩いてきたという真を連れて部屋まで戻った。正直どうすればいいのかもわからず、お互い明日オフだったことが幸いで今日はうちに泊まらせることにした。
「……ふふ」
「…………何」
エレベーターで部屋まで上がっている途中、真が微かに笑ったので顔を覗き込むと、腫らした目のままではあるけれど、どこか安堵したような、あまり人前では見せない隙のある笑顔をする。
「肇の家に泊まるの、デビューの時以来だなって思って……そもそもここ数年、あんまり来てなかったし。」
「……言われてみれば確かに……てか、その割にはよくわかったな。」
「…………案外覚えているもんだよ」
どこか含みのある言い方をした真に違和感を覚えたが、エレベーターが止まったので開くボタンを押して真に出るように促す。
社長に会ってきたからか、真はしっかりしたスーツを着ていて、こんなに濡らしてしまって大丈夫なのか?と思いながら、家の鍵を開けて先に真を入れたあと、風呂に入るように言った。
「おい、スーツとりあえず乾かしとくから。」
「うん、ありがと。」
シャワーを浴びている彼のシルエットを見ながら声をかけた。タオルを外に準備して、とりあえず着替えとして俺のジャージを置いとく。スタイルも背丈もあまり変わらないから俺のものでも大丈夫そうだ。
「服とタオル置いといたから使えよー。」
そう言ってキッチンへと移る。真はまあ美味い飯でも食ってきたかと思うけど、俺は何も食べてなかったし軽くサンドイッチでも作ることにした。今から眠れる気もしないしどうせなら、とコーヒーも淹れた。
ハムとレタスを挟んだだけのサンドイッチ。そういえば、収録後に真が話したいって言ってたけど……あいつが大丈夫そうだったらついでにそれも聞きたいな。
というか今俺が飯食ってたら用事が嘘なのバレるかな。そこまで勘は鋭くないと思うけど。
「ごめん、お風呂ありがとう」
俺のジャージを着て、首にはタオルをかけた状態の真が出てきた。コーヒーの匂いがすると言った真に、お前も飲むか?と声をかけるが首を横に振った。
「急に家来てどうしたの、鍵でもなくした?」
サンドイッチを食みながら、なんとなく軽い気持ちで聞いてみたけど、当の本人は思い詰めたような、苦しそうな表情をしているのを見てギョッとする。
「いや、無理には話さなくてもいいけどさ……」
そう付け加えたけど、また真は首を横に振って、重い口を開いた。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Me | 作成日時:2021年9月23日 18時