《7/1完結》F-to-L 4【N.K】 (ページ21)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:23,251 hit

111 ページ21

　
　
　
いまだに覚えてる。和也との初デートのことは。

「ねぇ、A」
「んー？」
「今度ちょっと卒論の資料集め手伝ってくんない？」
「いいよー」
「マジ？助かるー」

友達のコズエと大学近くのカフェで砂糖多めのコーヒーを啜りながら、話す昼下がり。

窓の外はポカポカと陽射しが照っていて。
秋の始まりを告げる冷たい風がサワサワと街路樹の木々を揺らしていた。

目指してた大学も和也のおかげで無事に合格して。すぐに友達も出来て。いわば順風満帆な大学生活を送っていた大学２年のある冬の日のこと。

「オレ、大学卒業したらアメリカ行くから。」

まるで日常の挨拶をするような感じで口にした言葉に動揺を隠せなかった。

ホントに突然で。

けど意志の固そうなその目に私は何も言えなかった。

何の相談もなしに勝手に一人で決められて。

なんで一つの相談もしてくれなかったの？なんてうわ言はグッと飲み込んだ。

夢なんて語られたことなかったけど
彼にも夢ができて。その夢を追いかけようとしてるんだ。

その道を私のわがままで閉ざしてはいけないと。

「ふぅん…頑張ってね。」

嘘の作り笑いをして、彼の背中をそっと押した。

“何？なんかもっと行かないでー！、とか私も連れてってー！とか予想してたのに。”ってクク、といつもみたく喉を鳴らして笑った和也に

「はぁ？私、そんなキャラじゃないし」

口からは一つも可愛い言葉が出てこなかった。

その日以来、事あるごとにデートの誘いを断って会わないようにした。

会ったら泣いちゃうって自分でもわかってたから。

私が泣いて「やっぱ行かない」なんてなるのは絶対に避けたかったし。

日本から旅立つ日も見送りには行かず。

“お願いだから見送りにくらい来てよ”

と前の日に来てたメールもすぐに削除した。

無論。海外に行ってからは連絡の一つもなく。

真剣な顔して「海外に行くから」とゆー話をして以来。私は和也とは会っていない。

海外に行くとはいっても、どのくらいの期間いるのか。何のために行ったのか。

和也が日本を旅立って２年近くたつ今も私は知らない。