分析 ページ3
.
なんだか呆気にとられて、気がつくと天宮さんを凝視していた。
ーー呆れられた訳じゃないんだ。
恐れていた事態を回避できたことに安堵すると同時に、やっぱりこの人は読めないな、と思う。高校生相手でも真摯に受け止めるところが、その自覚のない優しさが好きだ。
「ちょっと、天つ…天宮さん! 時間!」
「わあっ、すみません! Aちゃんごめん、またね!」
「あ、はい! ありがとうございました!」
なんと。自分のことで頭がいっぱいでスタッフさん(おそらく)の存在に気づかなかった。
よく見たら車が止まっていて驚く。天宮さんは革靴を履いて、少しよそ行きの格好をしていた。そういえば初対面のとき、いつもお洒落に気を配っている人なのかと思いきや、その数日後見かけたときはTシャツにジャージのズボン、そして草履のようなサンダルのような靴という出で立ちで少々驚かされたんだった。
そんな気合いの入っていない格好でも様になるのだから美形は羨ましい。むしろギャップにやられてしまった。
そんなことはさておき、仕事の出発を遅らせてしまっただろうか。申し訳ないとは思うが、私は単純なもので嬉しさが勝った。
ただ優しい目をして話を聞いてくれる。それは甘やかしているのではなくて、味方でいるよと伝えられているようで、心の奥の方から温まっていくのだ。甘えているのは私。履き違えてはいけない。
でもそれは彼にどんなメリットがあるのだろう。私にしか良いことがないというのはなんだか今更になって遠慮してしまう。かと言って私にできることは無いに等しい。見返りを求めないという美徳は、ときにとても厄介なものとなる。何か、何らかの形で返したいと思うのだ。それ程までに、強く感謝をしているのだから。
*
「あまちゃんねえ、もっと時間に敏感になってくれよ? 幸い今日はリハだけど、本番でやったら承知しないからな」
「申し訳ないっ。ごめんね? 怒んないで? ね?」
「気をつけてね。というか君ちゃんとご飯食べてるの?」
「うん? …努力はしてるんだよ?」
「だと思ったわ」
スタッフさんは肩を竦ませた。呆れてますよ、と体現した彼は、ついでに溜息を一つつく。
「だいたいね、君もうちょっと気を配りなさいよ」
「ほんとに、ほんとにごめんなさい。次からはちゃんとしますから許してー根に持たないでー」
「違うよ、君肌荒れんじゃん。今やテレビもたまに出演するし、撮影だってあるんだからね。ほとんど歌手と同じなんだから自覚を持つこと。いいな?」
ううむ。そうきたか。
.
166人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恵澄 - rianさん» 嬉しいお言葉です。そう言っていただけるとありがたいです。またの更新をお待ちください。楽しんでいただけますように!(*^^*) (2019年6月29日 21時) (レス) id: 4ef46f1a3a (このIDを非表示/違反報告)
rian(プロフ) - ゆっくりでいいですよ(о´∀`о)楽しみに待っています!無理をしない範囲で頑張って下さい(´p・ω・q`)♪首を長くして待っています!応援しています!文才がないのでめちゃくちゃな文ですみません(≡人≡;) (2019年6月26日 7時) (レス) id: 8fa20177a2 (このIDを非表示/違反報告)
恵澄 - 如月さん» ありがとうございます! 応援嬉しいです! もう少しで一話分練り終わるので、お待ちくださいね。頑張ります! (2019年3月18日 11時) (レス) id: bccdb31748 (このIDを非表示/違反報告)
如月 - 受験お疲れ様です!更新楽しみに待ってます!応援してます! (2019年3月17日 19時) (レス) id: 25018121b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:恵澄 | 作成日時:2019年3月13日 10時