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忸怩 ページ2

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 返却された答案用紙の数々を見て、思わずきゅっと唇を噛む。

ーーこんな筈じゃなかった。

 高校生は、今まで通りにはいかないのだ。自分がどれ程浮かれ、ぬるま湯の中にいたかということを思い知った。これでは母親の言った通りではないか。遊んでいる時間があるならば勉強にまわせと、そう言われたばかりではなかったか。

 思考が悪い方に向かっていることに気がついたものの、情けなくて悔しくて、そこから脱することを早々に諦めた。折角応援してくれた人がいたのに。大好きな人に励ましてもらって、それなのに。

ーー会いたくない。

 きっと優しい天宮さんなら、今回の結果に関しても何か元気になれるような言葉をくれるのだろう。けれど今はそんな言葉すらも辛いと思った。きっと失望されてしまう。言葉の裏で静かに熱が消えていくのを、感じたくなかったのだ。

『こんなときまで他人のことを考えているの』
 私は冷めた自分の声を聞いた気がして、居心地悪く帰路に着いた。





「あれ、お帰りなさい」


こんなときに限って、会ってしまうのだ。どうにも間が悪い。そして彼はとても鋭い。目を合わせたら、口を開いたら泣いてしまいそうで、無愛想に短く返事をして爪先をじっと見つめる。そのまま通り過ぎようとするけれど、何か言いたげな様子で首をかしげる天宮さんを無視できるほど、私は冷たくなれない。

「…元気ないね」
「そうですか…?」
「うん。嫌なことでもあった?」

そっと顔を覗き込まれて、嘘なんてつけるはずもなく。上擦る声で、テストが、と言えば、そっか、と深く頷いてくれた。

こんなはずじゃなかったんですよ。もっとできるって思ってたんです。きちんと勉強だってしたし、と続けようとして、はっと口をつぐむ。

休憩時間が長かったり、つい怠けたりしたのは自分のせいで、自業自得だ。いよいよ「努力したのに」なんて言えない自分が情けなくなって、そのまま黙り込んだ。

「あのさ、」

天宮さんは、片膝を軽く曲げて重心を変える。首元に手をやると、んー、と短く言葉をつないで再び口を開いた。

「あのね。俺ができることはほとんどないんだよ。
頑張って、とか、お疲れ様、とかそのくらいの言葉しか言えない」

彼の言葉の意図がわからなくて、次の開口を待つ。

「でもね、俺も一応高校生やったことあるからさ。悩みを聞く時間と場所、あとは共感? そのくらいなら提供できるんですよ?」
「え」
「あ、勉強教えてとかはナシね。俺もわかんないから」

つまり、それって。


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恵澄 - rianさん» 嬉しいお言葉です。そう言っていただけるとありがたいです。またの更新をお待ちください。楽しんでいただけますように!(*^^*) (2019年6月29日 21時) (レス) id: 4ef46f1a3a (このIDを非表示/違反報告)
rian(プロフ) - ゆっくりでいいですよ(о´∀`о)楽しみに待っています!無理をしない範囲で頑張って下さい(´p・ω・q`)♪首を長くして待っています!応援しています!文才がないのでめちゃくちゃな文ですみません(≡人≡;) (2019年6月26日 7時) (レス) id: 8fa20177a2 (このIDを非表示/違反報告)
恵澄 - 如月さん» ありがとうございます! 応援嬉しいです! もう少しで一話分練り終わるので、お待ちくださいね。頑張ります! (2019年3月18日 11時) (レス) id: bccdb31748 (このIDを非表示/違反報告)
如月 - 受験お疲れ様です!更新楽しみに待ってます!応援してます! (2019年3月17日 19時) (レス) id: 25018121b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:恵澄 | 作成日時:2019年3月13日 10時

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