Family２

お互い様 ページ20

「出て行った日から一度も帰って来てないし、きっとこの先も帰って来ない。

両親は仲が良かったから、最初はショックだったけど
仲良く見えていただけで本当は表面上だけだったのかもしれないと思うようになった。


だから、母親の愛情についてはよくわかってるけど
父親のことはわからない。


家族って何なんだろうね」



そう言いながら笑う


何なんだ、こいつ

一気にわからなくなる



「…もしかして
この部屋は」

「そうそう。父親がいた部屋。
楽器が好きでわざわざ家に防音室を作ったんだって」

「へぇ…」

「ごめんね。何の参考にもならない話で」






こんな俺を家族として受け入れて

色んな過去があるらしい2人の男を弟として可愛がって



誰よりも幸せに生きてきたような顔をしてるのに

本当は傷を抱えていた




笑ったり謝ったり


本当はどう思ってるんだ？





「……」

「ん？
え、何？そんなじーっと見て」

「わかりそうでわからない」

「？」

「とりあえず

ごめん」


謝ってほしいかどうかはわからないけど

俺は、謝らなければいけないと思った



「“ぬくぬく育った”とか言って悪かったな」

「あぁ…」


気まずそうに笑う


今まで全然気づかなかったけど

こいつは、人の気持ちばかり気にして自分のことは後回しで来たんだろう


だから

自分のことになると笑って誤魔化す癖があるみたいだ



「大丈夫だよ。ぬくぬく育ってきたのは嘘じゃないし」

「……」

「ベッキョンさんって意外と素直に謝れるんだ」

「どういう意味だよ。

てか、その さん付けもやめろ。気持ち悪い」

「気持ち悪いって…出会ってからずっとこうなのに。今更」

「いいから」

「勝手だなぁ。

それならあたしのことも名前で呼んでよ。あんたとかお前とかじゃなくて」

「…気が向いたらな」

「えー！ずるい！」

「うるさい」

「むー…」


コロコロと変わる表情


無理をしてるのか自然体なのか

そこまでは、俺にはわからない



こいつが父親のことをどう思ってるのかとか平気なふりをして本当はつらいんじゃないかとか

気にならないと言ったら嘘になるけど



俺だって自分のことを話すのは抵抗があったし、実際こんなに時間がかかったんだから

こいつだって同じだろう


話したくなったら話せば良い



そのときは…俺が聞いてやろう

温かい言葉や行動をくれたお返しに





「なぁ」

「…何」

「腹減った」

「え」

「メシ」

「食べる…の？」

「うん」

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