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「今朝、川を流されている所を発見されました」

若い巡査の説明に真面目な顔になった乱歩さんは、「ご婦人か」と帽子を取って胸元に当てる。その横で、私は敦さんをちらりと見やった。恐らくこういった遺体を初めて見る筈の彼が気分を悪くしていないか心配になったのだが、どうやらそれは杞憂だったらしい。遺体が比較的傷ついていない為か、特に顔色が悪くなる様子はない。ただただ、痛ましげな視線を注いでいる。

安堵して乱歩さんと箕浦さんのやり取りに耳を傾ければ、遺体は見た目通りに胸部を3発撃たれているとの話だった。だがそれ以外の、事件現場や時刻は判らず、弾丸も貫通していて発見出来ていないらしい。

(胸部に3発といえば、マフィアの処刑方法に似てるような)

乱歩さんが忌憚の無い意見を述べた所為で場が少し険悪になる中、ふとそう考えた時だった。

「おーい、網に何か掛かったぞォ」

後方から聞こえたその声に振り返ると、川から大きな網が引き上げられていくのが目に留まった。チラチラとゴミらしき物が付いているが、あれは一体何なのだろうか。

「何です、あれ?」

私と全く同じ疑問を投げかけた敦さんに答えたのは、若い巡査だった。

「証拠が流れていないか、川に網を張って調べているのですが――」
「ひっ、人だァ!人が掛かってるぞォ!」

ぎょっとしたように続いた叫び声に、一瞬にして場の空気が凍り付いた。真逆第二の被害者か、という緊張が張り詰める中、網に駆け寄った私達の前に引き上げられてきたのは――……。

「「「「……」」」」

完全に生きている、しかもよく見覚えのある御仁の姿。
――とぼけた顔でこちらを此方を見下ろす、太宰さんだった。

「やあ二人共、仕事中?おつかれさま」
「何をやっているんですか貴方は」

真逆此処で彼が魚よろしく釣り上げられるとは思ってもみず唖然とした私達に対し、暢気に片手を挙げるずぶ濡れ木乃伊。どこまでもマイペースな彼に、思わず冷ややかな声が出た。

「ま……また入水自 殺ですか?」

引いた顔で敦さんが尋ねれば、太宰さんは勝手に理解不能な語りを始めた。曰く、美女と心中したいだとか、今日のは「川を流れてただけ」だとか、訳の判らないことをどや顔で。

(もうこの人「磯男」とか「河童」って呼んでもいいんじゃないかな)

取り敢えず「なるほど」と云ってやる敦さんの優しさに色んな意味で冷えきった心を温められながら、地面に下ろされた磯男に小さく溜息を吐いた。

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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時

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