11.名探偵の能力 ページ14
乱歩さんは眼鏡を掛けると、狐のように細い目をスッと開く。すると何故か彼が取り巻く空気の温度が下がったような気がし、私は固唾を飲んで乱歩さんを注視した。
「……………。な・る・ほ・ど」
十秒も経たない本当に短い時間の後、乱歩さんは眼鏡を押し上げながら呟いた。
「犯人が判ったのか」
「勿論」
問いかけにピースサインを作った乱歩さんを、箕浦さんは小馬鹿にするように喉の奥で笑う。
「どんな
乱歩さんは無言で、ある人物を指差した。その指が示す先に目を向けた私達は揃って目を見張る。
「犯人は君だ」
ぴたりと乱歩さんに示されたのは、同じく目を見開いている杉本さんだった。
「は――？」
唖然としている杉本さん同様、私も理解が追いつかず、頭の中で大量の疑問符を生産してしまう。まるで推理小説の様な展開だが、それは小説だからこそ受け入れられるのであって、現実ですんなり納得するのは流石に難しい。
そして一拍置いて、静寂に包まれた河川敷に箕浦さんの大きな笑い声が響き渡った。
「おいおい貴様の力とは笑いをとる能力か？杉本巡査は警官で、俺の部下だぞ！」
だがその笑い声に動じる様子は一切無く、乱歩さんは一文節ずつ区切って断言する。
「杉本巡査が、彼女を、殺した」
「莫迦を云え！大体こんな近くに都合よく犯人が居るなど……」
「犯人だからこそ捜査現場に居たがる」
同意しか出来ない反論を遮り、「それに云わなかったっけ？」と乱歩さんは続ける。
「『どこに証拠があるかも判る』って。――拳銃貸して」
くるりと振り返り手を差し出した彼に、杉本さんは慌てた。
「ば、莫迦云わないで下さい。一般人に官給の拳銃を渡したりしたら、減俸じゃ済みませんよ！」
「その通りだ。何を言い出すかと思えば……。探偵って奴は口先だけの阿呆なのか？」
乱歩さんは余裕の表情で杉本さんを片手で制した箕浦さんを見据え、
「その銃を調べて何も出なければ、僕は口先だけの阿呆ってことになる」
と煽る。それにうんざりした様子で箕浦さんは溜息を吐いた。
「……ふん。貴様の舌先三寸はもう沢山だ。杉本、見せてやれ」
「え？で、ですが」
「ここまで吠えたんだ。納得すれば大人しく帰るだろう。これ以上時間を無駄にはできん。銃を渡してやれ」
どうなるのか、と私は再びハラハラしながら三人を見守る。これで間違っていたら本当にどうしようもなくなる――そう思った、が。
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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます！大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀｀)ノ頑張って更新しますね！ (2020年3月12日 7時) (
レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね！ (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね！すみません、修正します！ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜夜華
| 作成日時：2019年11月28日 1時
