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「その一件から、首領(ボス)は彼に私への接近禁止令を出したので、彼に会うことは殆ど無くなりました。まぁ、うっかり鉢合わせた時はもの凄い目で睨まれましたが」

常軌を逸しているとしか思えない芥川の太宰さんへの執着は、同時に彼の中で太宰さんがどれだけ大きな存在であるかも示している。それを正確に測ることは私には出来ないが、ああして襲われれば想像を絶する程なのは流石に判る。

「大変だったねー」

だがしかし、その当事者はそれを判った上でこの調子である。

「何を他人事に……。元はと言えば全部貴方の所為だってこと、判ってますか?」
「あはは」
「笑い事じゃないんですが」

苛立ちのあまり無駄に整った顔をじろりと睨み上げたが、悲しいほど全く効果がなく、それどころかまたも嬉しそうにされてしまった。もう意味が判らない。

「はぁ……」

すっかり睨む気も失せて再び溜息を吐く私を、太宰さんはそれは楽しそうに見ていたが、ふとそれが柔らかく邪気の無い笑みに変化する。
ころころ、くるくると変わる彼の雰囲気はまるで風見鶏か何かのようで、どうにも掴み所がない。

「芥川君は昔と全然変わってなかったけれど……、君は変わったようだ」
「……?四年も経てば、見た目くらい変わると思いますが」

今更何を云うのか、という意味を込めて返すと、太宰さんは「違うよ」と苦笑する。

「表情が昔より出るようになった。基本無表情な所は変わっていないけれどね。嬉しい成長だ」
「そう……でしょうか」

むず痒い心地になり、堪らず私は視線を少し落とした。知りもしなかった自分の変化を指摘されたこともそうだが、それよりも。

(嬉しい、なんて)

そんなことを云われるとは、思ってもいなかった。

「そうだよ。昔じゃあ私を睨むだなんてあり得なかったし。その調子でどんどん表情を出していってくれるといいねえ。それでいつか――……」

と、何故かそこで彼は思い直したように口を閉ざしてしまった。「太宰さん?」と促しても、「何でも無いよ」とただ微笑むばかりで。

『――いつか君の、笑ったところを見てみたい』

彼の中に秘められたその思いを、私は未だ、知らない。

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霜夜華(プロフ) - 有彩さん» 遅れましてすみません!公開しました!そしてお褒め下さってありがとうございます(*^_^*) (2019年11月28日 1時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
有彩 - とても面白くい作品です!!続編が、楽しみです!何日くらいに、なるのでしょうか! (2019年11月28日 0時) (レス) id: b0517c2008 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 細波幸近さん» ありがとうございます!のんびりですが、続きも頑張って書いていきますね!(*´ω`*) (2019年11月16日 21時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
細波幸近(プロフ) - いつも読ませて頂いています!とても面白会です! (2019年11月16日 21時) (レス) id: a768fd0174 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼすジュースさん» ありがとうございますー!ノロノロ更新ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年8月5日 22時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年6月10日 15時

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