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理解した途端、とてつもなく弄ばれたように思えて、主犯格であろう太宰さんを私はじろりと睨み上げた。

「昨日といい今日といい……。何の為にこんな大がかりな事仕組んだんですか。太宰さん」

冷ややかに問いかけた私を宥めるように、太宰さんは苦笑する。

「仕組んだのは私だけじゃあないさ。云っただろう?『仕事の斡旋』って。つまりこれは一種の――入社試験だね」
「入社……試験?」

予想の斜め上からの答えに、私と敦さんは揃ってぽかんとした。

(ニュウシャシケン……。……入社試験??)

ついカタカナ翻訳した挙げ句、入社試験って何、と哲学的な方向へ思考が逃避しかけたが、それを許さないとばかりに不意に威厳のある深い声が社内に響いた。

「その通りだ」
「!」

はっと声のした方へ顔を向けると、そこには和装の男性が立っていた。その体から滲み出る刃のような鋭い武の気配に、ピリリと肌がざわめく。
立ち姿ひとつ取るだけでも全く隙がないその様は、まるで丈夫な鋼のようで、私は小さく息を飲んだ。恐らく素の実力なら、この場に居る誰も彼に勝つことは出来ないだろう。

「そこの太宰めが、『有能なる若者達が居る』と云うゆえ、その魂の真贋、試させて貰った」

驚くべきことに社長であるらしい彼がそう云うと、太宰さんが続きを引き継いだ。

「君達を社員に推薦したのだけど、如何せん敦君は区の災害指定猛獣だ。保護すべきか社内で揉めてね。早苗も探偵社員たり得るか確かめる必要があったし。
で、社長の一声でこうなった、と」

いや「こうなった」じゃない、と反射でツッコみそうになった。こんな無茶苦茶な入社試験を敢行するなど、社員も社長も全員ぶっ飛びすぎだ。物騒さがマフィアと団栗(どんぐり)の背比べで洒落にならない。

「で、社長……。結果は?」

国木田さんに問われた社長さんは、じっと私達を見下ろす。その射貫くような視線に気圧されそうになりつつも、ぐっと堪えて見つめ返していると、彼は静かに目を閉じ踵を返した。

「太宰に一任する」

そう一言残して、静かに去って行く彼の背中を呆けて見つめていると、「合格だってさ」と太宰さんが笑いかけた。

「つ、つまり……?僕達に斡旋する仕事っていうのは、此処の……?」

怒濤の展開をどうにか飲み込めた敦さんの確認に、太宰さんはおかしそうに笑って軽く両手を広げてみせた。

「武装探偵社へようこそ」
 

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霜夜華(プロフ) - 有彩さん» 遅れましてすみません!公開しました!そしてお褒め下さってありがとうございます(*^_^*) (2019年11月28日 1時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
有彩 - とても面白くい作品です!!続編が、楽しみです!何日くらいに、なるのでしょうか! (2019年11月28日 0時) (レス) id: b0517c2008 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 細波幸近さん» ありがとうございます!のんびりですが、続きも頑張って書いていきますね!(*´ω`*) (2019年11月16日 21時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
細波幸近(プロフ) - いつも読ませて頂いています!とても面白会です! (2019年11月16日 21時) (レス) id: a768fd0174 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼすジュースさん» ありがとうございますー!ノロノロ更新ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年8月5日 22時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年6月10日 15時

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