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そして雑炊を食べながら、乾いた顔でいろんな感情を吐き捨てるように話してくれた。
前に号泣していたのは、会社で唯一だった同期が知らないうちに辞めていたから。それから、そのおかげで仕事量があり得ないほど増えて、最近は会社で生活していたこと。回され続ける仕事に嫌気がさして、眠気と苛立ちに身を任せて上司に怒鳴りかかったら逆ギレされたこと。その上クライアントのミスが会社に降りかかって、担当だったという理由だけで大変な思いをしたこと。
「丸く治りましたけどね、ストレスって溜まるものなんです。あんな上司に一生こき使われて会社の犬になって頭下げ続けるくらいならいっぺん死んだ方がマシ」
いつも張り付いてる笑みでさえ、ない。真顔でそれでもしっかりと怒りを含んで、数々のことを打ち明けている彼女は本当に、限界だということがわかる。おまけに「電車で帰るとき、ここで飛び込めば死ねるなって思うんです」と、はっきりと言い出す始末だ。一体どれだけ追い詰められているのだろう。計り知れない。何も知らない僕じゃ、わからない。
でも。
きっと彼女は限界で、壊れてしまいそうなんだ。今まで何度も壊れそうなたびに、なんとかつぎはぎにしてやり過ごしてきた精神も、もうぐちゃぐちゃになる寸前なんだろう。
だってこんな一宮さんを俺は知らない。いつも愛想(笑)がよく、そして少し戯けたようなことを言っては、疲れた顔で笑う彼女。そんな彼女に滲み出る、生々しい人間らしさというものが僕を惹きつけていた。
だからこそ、人はこんな風になっちゃいけないと思った。こんな風になってしまうほどの環境に、身を委ねる必要もないと思った。
性根は明るく社交的であろう彼女は、どれだけ変えさせられてしまったのだろう。この小さな体に抱え込む責任も、重圧も何もかも、身勝手でもいいから捨ててしまえと思った。抱えきれないものを抱えようと一生懸命になって、その度に壊れそうになる一宮さんがいつか本当に壊れてしまうんじゃないかと思った。
「僕は今から無責任なことを言います」
それから、「なので聞き流してくれていいです。本当になんなら聞かなかったことにしてくださいね」と前置きをした。不思議そうな顔をする彼女の手を優しくとって、つぶやいた。
「会社を、やめてください」
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まほろ(プロフ) - morさん» 気付くのが遅くなってしまいすみません…。沢山褒めていただいて、私もモチベーションが上がりました(笑)これからもどんどん西山さんと一宮さんが仲良くなっていくので、是非完結までお付き合いください! (2021年12月21日 7時) (レス) id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
mor(プロフ) - 文章を書くのが上手すぎます…!!あとラジオの相槌の感じ(あの、とかを入れるタイミングとか)が絶妙すぎてめちゃくちゃ感情移入できます!!こんなに面白い小説久しぶりに出会いました、これからも応援しております!! (2021年12月18日 1時) (レス) @page21 id: 06bc4acfa5 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - きゃらめるかも。さん» 素敵なコメントありがとうございます〜!これから長い長い物語になりますが、ぜひお付き合いくださいませ! (2021年12月15日 7時) (レス) @page9 id: 0871b431d8 (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめるかも。 - めちゃめちゃ面白いです!!ゴキブリの話とか!笑、その発想はなかったのでビックリしました!これからも、お体に気をつけて頑張って下さい!😆 (2021年12月14日 14時) (レス) @page4 id: 242d71ebf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まほろ | 作成日時:2021年12月14日 7時