#109 受けて立つぞ、ド三流 ページ9
私が参加するにはなかなかしんどい競技だけれど、見てる分にはそこそこ面白い。何より観戦してて見られるのは、我が愛弟子の勇姿である。良い。
フレッドとジョージは巧みにバットを使って飛んでくるブラッジャーを捌いているし、ハリーは既にスニッチを見つけたのか懸命にそれを追い掛けている。
──けれど不意にハリーの箒の挙動が変わった。ぐんと激しく上下左右に揺れては乗り手のハリーを振り落とさんばかりの勢いだ。
誰の、仕業だ?
私は咄嗟に右目を思想を視る目に切り替え、それで観客席を見回す。浮かび上がった害意が目につき、私はチッと舌打ちをした。
「クィレル…!」
やりやがったな。三下の、分際で。
私の中で怒りが膨れ上がる。私の中で
こんな感覚も久しぶりだ、なんて他人事のように考えながら、未だそれに気付いていないクィレルに目を細める。そうだ。自分の宝物に手を出されるというのは、こんなにも
不愉快、だったか。
「A。」
ドラコに手を引かれてふっと我に返る。彼は私がしたことを察したのか、ちらと私を促すように教諭席に目を向けた。
自分のローブの惨事に悲鳴を上げるクィレルと、釣られて声を上げる周囲の教授達。セブルスが私を見た気がして、そっと頬を緩めた。
「……まったく、君は常々無茶をする。目立った行動を取って立場が悪くなるのは君だろうに」
「………こんなイベントの真っ最中じゃあ、気付きはしないさ。」
所詮あいつも、人の子よ。
箒の主導権を取り戻したハリーは、再びスニッチを追い掛け始める。二度同じことが起きることはなく、クィディッチの試合は無事グリフィンドールの勝利で幕を閉じた。
…些末事だが。ハリーがスニッチを吐き出したあの一件は、彼がそうすることが出来なかった場合、どうなっていたんだろうか。…まあ、魔法で取り出すなり何なりするか。
試合終わりにまた彼らに会いに行けば、チームメンバーと勝利を喜んでいたハリーが私に気付いて走ってがばりと抱きついてくる。私はそれを笑いながら抱き留めた。
「兄さん、勝った!スニッチ取ったよ!」
「見てたよハリー!懸命に頑張ってたじゃないか」
口でキャッチするとは思わなかったけど、と笑えば、それは言わないでよ、と彼自身もそのつもりはなかったようで困った顔をしていた。
(彼らは私が、守ってみせる。)
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葵 - とっても面白いです!更新される日を待ってます! (2023年5月5日 22時) (レス) @page35 id: 1e793d26dd (このIDを非表示/違反報告)
レイ - めちゃくちゃ好きです!応援しています! (2023年4月19日 15時) (レス) @page35 id: 58fc769308 (このIDを非表示/違反報告)
天鬼雷壊(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです。プライベートのことなどでお忙しいとも思いますが、更新するのを楽しみに待っています! (2023年4月6日 18時) (レス) @page35 id: e391e268f1 (このIDを非表示/違反報告)
Aoiro - 失礼します!とても面白く読ませていただきました。続きが気になります。更新してくださる事を心より楽しみにしています! (2022年9月20日 23時) (レス) @page35 id: 5f332b141b (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 失礼します、コメントのいる方が仰っているようにとっても面白い作品で魅力されました。これは一読者としての意見と我儘ですが、更新してくださる日が来る事を心の底から楽しにみ待っています! (2021年12月29日 3時) (レス) @page35 id: 2224f94912 (このIDを非表示/違反報告)
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