私の夢だった【A3!】 (ページ1)

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雨が降り、いつもは賑やかな天鵞絨も活気がない中、傘をさしてスーツケースを引きずる女がいた

その女性はある劇場の前で立ち止まり、中を覗きまた歩き出したがすぐ隣の寮でまた立ち止まりスマホを取り出して電話をかけた

「もしもし、立花Aです。お久しぶりです、支配人」

「えぇえ！！？立花さん！？！ここここ、こんにちは」

「はい、こんにちは…今寮にいたりしますか？電気がついてるみたいなんですけど…団員、もう集まってるんですか？」

すると、中から勢い良く支配人こと、松川さんがメガネを抑えながら飛び出してきた

「いつ帰国したんですか！？どうぞ入って下さい!」

返事もしていないのにスーツケースをひったくり足早に寮の中に入っていった支配人の後ろを女は追いかけた

中に入ると懐かしい思い出が蘇ってくる。よく父親に連れてきてもらっていたし、団員さんにもよく可愛がられていた

「Aさん、こっちです」

ドアからひょっこり顔を出す支配人を見て現実に引き戻されて支配人の方に行くと団員と思われる人が何人かソファーに座っていた

「こんにちは」

そう声をかけるとバラバラながらもみんな返してくれた

「いつ帰国したんですか?」

「2時間前ですかね、実家によらずに来てしまいました。父はまだ連絡つかないんですか？」

「そうなんですか！…幸夫さんはまだ連絡が取れていません」

父さん、どこに居るんだろう?

「あ、そうだ!団員集まったんですね。私、知らなくてお土産足りるか…」

スーツケースからアメリカ土産を取り出し渡す

「ありがとうございます!団員は前と同じく5人ずつ揃っていますよ！」

「そうなんですか！稽古場とか見て周っても良いですか？」

「是非！」

立ち上がり、第1レッスン室に向かうと春組の人達が連絡していた

「中、見ていきます？」

「他にもレッスン室あります？」

「はい、2階に」

と、二回に通され第2レッスン室に向かうと使用されていなく、じっくり見ることができた

「ここ、ロッカー作ったほうがいいですよ」

それに、ピアノがあるのに音がズレているところがいくつかある

「はい！ロッカーと調律ですね!じゃあ次は第1行っちゃいましょう！」

支配人がメモをとり終わると鼻歌交じりで階段をかけていき、使用中なのに躊躇いもなく入っていった