守る翼４

14. 変わらない日常 ページ15

Aside


戴冠式があった日、
私達は想いを伝え合った。


けれど、
私達の日常に特別な変化はない。

相変わらず忙しい日々を送っている。

　

兵長は今、
ヒストリアが提案した
孤児院設立に向けての会議に参加中。

私は兵長不在の執務室で
書類と格闘中。

　

　

　
ｶﾞﾁｬ

『あ、兵長。おかえりなさい。』

　

地下街から壁の端から端まで調べ上げ、
孤児や困窮者を集めて面倒を見る。

そして、
王室の公費や没収した議員の資産を
その運営に回したり、貧困層の支援にあてる。

それが、ヒストリアがやろうとしていること。


地下街出身の兵長は
そんな彼女への協力を惜しまなかった。

　

「次の会議は
お前にも出席してもらうぞ。」

『私もですか？』

　

私は地下街にいたことはあるが、
そこで生まれ育ったわけではない。

住んでいたのも１年程度。

　

「お前は珍しい例だからな。
意見が聞きたいと、女王からのご使命だ。」

『私は地下街に
救われた側の人間ですからね。』

　

私は望んで地下街に行った。

力があれば生き残れるあの世界は、
過去の私にとって
地上より生きやすい場所だったから。

　

　

　
自分の席に着いた兵長に
団長から預かっていた書類を渡すと、

「…」

彼は私の手にある紙の束を睨みつける。

　

『そんなに睨んでも書類は無くなりませんよ』

　

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