056)純粋な愛<YN side> ページ6
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毎月この日が嫌で仕方がない。
家族全員集まっての食事会。
そこにはきまってソヨンもいて。
最近はソヨンの両親も来るようになっていた。
母「遅かったのね。ユンホさん。皆さんお待ちかねよ。」
ユノ「すいません。仕事が長引いたもので。」
わざと遅れてきたくせに、出来上がっている輪の中に入っていくのはもっと嫌だ。
ユノ「遅くなって申し訳ありません。」
ジニョク「早く座れ。ソヨンもお前を待っていたぞ。」
ソヨンは俯いたままこちらを見ようとはしなかった。
ソヨン母「ユンホさん。お帰りなさい。お仕事大変ね。」
ソヨン父「ユンホ君。聞いたよ。大きな取引を成功させたそうじゃないか。」
少し前までは大切な人の両親だった筈のこの人たちへの感情も、今は不思議な位に冷めている。
食事会はふたりの母親による縁談の話ばかりで、俺がここにいなければいけない理由は全くない。
ソヨン母「それじゃあ、正式な婚約式の日取りは占い師に決めてもらいましょう。」
ユノ母「それがいいですわ。」
婚約式じゃなくて、業務提携式の間違いだろ?
心の中でそんなツッコミを入れながら、目の前の食事を黙々と口に入れていた。
ユノ父「ユンホ。新しく取引きすることになった日本の安藤コーポレーションの社長を、ソヨンさんのお父様に紹介して差し上げなさい。」
ユノ「…それは、すぐには無理です。正確な契約は来週ですし。しばらくして安藤様の事をよく知ってからでも…」
ユノ父「正式に契約を済ませれば企画部の仕事は終わりだろう。後は営業部の仕事だ。」
ユノ「…」
一度言い出したら絶対に譲らない父には誰も逆らえない。
ユノ「…わかりました。」
いつまで父や兄に従わなければいけないのか。
跡取りでもなく長男でもない。
俺は兄貴の予備として育てられてきただけ。
子供の頃から何かと差をつけられてきた俺達兄弟に、対等に接してくれていたのはソヨンだけだった。
だから俺はソヨンの惹かれたんだ。
ソヨンをどうしても俺のものにしたかった。
今ならわかるよ。
それが純粋な愛情じゃなかった事が。
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作者名:mari | 作成日時:2018年1月31日 23時