39.泣き腫らして ページ39
「グラファイトーー!!」
何度呼んでもグラファイトはいなかった。いつの間にか流れていた涙も乾いて、Aは自分がおかしくなった。
彼に会ってどうしたいんだろう。
また抱いて欲しいんだろうか。
抱いて慰められたいんだろうか。
でもきっとそうじゃない。
グラファイトと自分の関係は、表面的な行為だけ見れば身体だけの男女の不純な関係なんだろう。
愛してもいない男に身体を委ねる女と、他の男を愛してる女を抱く男。
でも、Aがグラファイトに委ねているのは身体じゃない。Aがグラファイトに許したのは、女としての身体ではなく、彼にしか分かってもらえない心の内なのだ。
最初からそうだった訳じゃない。
初めは黎斗が消滅した寂しさから、自暴自棄になりそうな自分を求めてくるグラファイトに身を任せた。
だけどグラファイトはずっとAの本当の気持ちの奥ばかりを覗いてさらけ出そうとしていた。
それもなぜだかはわからない。
素直なAを見たいからだと、そう言っていつも笑うグラファイトの真意は分からなかった。
グラファイトに抱かれてさらけ出すのは身体じゃない。自分の本当の気持ちだ。
だから、もう気持ちも感情も自分の手に負えなくなった今こそグラファイトに会いたかった。
「A」
その声に振り返えれば、探し続けていた瞳がそこにあった。強く深い光の瞳。
「グラファイト!」
グラファイトの顔を見た途端、また心の波がザワザワと立ち、Aの目から涙がポロポロと流れ出た。
そんなAにそっと近づいて、グラファイトが優しく抱きしめる。
そのままグラファイトは何も言わずAを静かに抱きしめ続けてくれた。
流れた涙は頬を伝い、顔を埋めているグラファイトの服に染み込んでは消えていく。そのまま彼の胸に溶けてしまえばどれほど楽なんだろう。
だけど身体は溶けることなんか出来なくて、グラファイトに優しく抱きしめられても、涙を流しても胸の奥の苦しい気持ちさえ溶けてはくれない。
「グラファイト」
彼の胸に顔を埋めたままそっと名前を呼ぶ。
優しく額に唇を寄せていたグラファイトはそっと顔を上げた。
「どうした?」
「今日は抱いてくれないの?」
泣き腫らした目で彼を見上げる。
グラファイトはほんの少しだけ困った様な顔をした。
「お前はゲンムを愛しているから泣いているんだろう?」
「そんな事、貴方は最初から知ってるくせに。」
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大崎舞子(プロフ) - kojiさん» 最後までお読みいただきありがとうございます!大好きだなんて、、うれしいです!!大人セクシー路線の黎斗とグラファイト、お楽しみいただけて良かったです! (2018年6月12日 21時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
大崎舞子(プロフ) - Hyuiさん» 皆さんにご理解頂けるか謎過ぎたグラファイトとの関係ですが、ホッとしました! (2018年6月12日 21時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
大崎舞子(プロフ) - moon791さん» いつもコメントありがとうございます!とても励みになりました^_^書けば書くほどグラファイトを好きになって大変でした爆 またどうぞよろしくお願いします! (2018年6月12日 21時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
大崎舞子(プロフ) - 双羅さん» 最後までお読みいただきありがとうございました!こんな夢主ちゃんを受け入れてもらえるかちょっと不安だったのですが、ありがとうございます!貴利矢も大好きなので頑張ってみます! (2018年6月12日 21時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
koji(プロフ) - お疲れ様でした!相変わらずの素敵な神とグラファイトにやられます。いつも楽しみで仕方ないです!大好きです!爆 又楽しみにしてます! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 91fefba221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おおさきまいこ | 作成日時:2018年5月17日 17時