『バグスターエモーション』

24.ゲームオーバー ページ24

それからの黎斗は自分が神だと言うことを憚らず狂気のまま突き進んで行く。

自惚れと予想外の事に脆い黎斗をコントロールするのは容易い。

しかし、黎斗との愛に溺れて行くAの心の端にはいつも正宗との計画がチラついた。



正宗の出所までに黎斗にクロニクルを完成させ、正宗にクロノスの力を手に入れさせる。
そして、その後はガシャットやゲーマドライバーを作ることの出来る黎斗を消す計画なのだ。



最初から利用して捨てる駒だった黎斗に自分が抱く気持ちをどうしていいのかわからない。


黎斗に愛を囁かれながら、これは正宗との計画を予定通り遂行する為なのだと必死で自分に言い訳をした。



黎斗の事など愛していない。

でも愛しくて堪らない。

でも愛してはいけない。

それでももっと黎斗に愛されたい。




A「私はどうしたいんだろう、、」




Aは黎斗が帰りを待ちながら社長室でため息をつき、いつもの窓の外の風景を眺めていた。

しかし予定の時間になっても黎斗が帰ってこない。
1時間待った。更にもう1時間。

Aは何か嫌な胸騒ぎがして黎斗の携帯に電話をした。呼び出し音になかなか応答がない。
少しAの心が焦り始めた時、、、



『ゲームマスターに用事か？』



鼻で笑うような声は黎斗の声ではなかった。



A「もしもし？誰？！」



『俺だよ、社長秘書さん』



A「パラドね！何故貴方がこの電話に出るの？！」


パラド『ゲンムはゲームオーバーになったんだ』



A「何ですって？！」


ーーーーーーーーーーー


その後、ポッピーからも連絡が入りAは黎斗がパラドに消滅させられた事を知った。

あの時、パラドが黎斗を睨んだ時に感じたAの一抹の不安は現実のものとなってしまった。


黎斗を失った喪失感は想像よりも静かにAの胸の中で染み入る様に広がった。



社長室から動かれぬまま、一人窓辺に佇み、誰も座っていないイスを眺めた。


夕焼けが差し、無音の社長室をオレンジに染める。黎斗と2人で眺めた美しい夕焼けも、今日はAの心を動かすこともない。

そのまま静かに夜が来て、いつも通りの夜の夜景が窓の外にキラキラと光り始めた。




涙は流れない。


窓に映る自分の顔がまた孤独な無表情の女に戻っただけだ。


もう抱きしめられることの無いこの身体が急に寂しくなった。

ため息をついた時、窓に映る自分を眺めるAの後ろからあの声がした。





「A、久しぶりだな」

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