用件/佐賀美陣 ページ3
貧血気味な転校生の彼女の付き添いとして保健室に行く事はよくあった。
心配だからってのもあるけど、大好きなあの人に少しでもいいから会いたいから。
「失礼します」
「お、どうした？」
「怪我しちゃって、絆創膏貰いに来ました！」
本当は絆創膏なんて貼らなくてもいい。
でも、こんな事言っておかないと長くここに居れないから。
少しでも、貴方と一緒に居たくて、あなたの姿が見たくて。
隠しきれてないであろう下心は、伝わってるのか分からないけど伝わってくれてたらいいな。
叶わない想いでも、知っていてほしい。
「先生、絆創膏ありました？」
「あったあった。ほら、怪我したところ見せて」
「はい！」
「素直でいいけど、声を少し抑えてな」
「了解です先生！」
素直って言われた。
それって、褒めてくれてるんですよね？
嬉しくなって、つい声に出して笑ってしまう。
すると、先生は少し不思議そうに私の方を見る。
「どうした、急に？」
「いや、嬉しいなぁって思ったんです。素直って初めて言われたかもしれません！」
「初めてって、そんなわけ無いだろ」
「そう言ってくれるってことは、先生は私の事本当に素直って思ってくれてるんですね」
「あぁ、そうだよ」
絆創膏を貼ってくれた先生は、私の頭を軽く撫でてくれた。
更に嬉しいって思って、口元が緩む。
先生は私の事喜ばすのが上手だなぁ。
「んで、本当の用は？」
「え？」
「このくらいの怪我なら、来なくても平気だろ」
「...バレちゃいました？」
急に言われたから驚いたけど、先生には通じなかった。
少し悔しくて、意地悪な感じに返す。
「ねぇ先生、私の気持ち伝わってます？」
「気持ちって？」
「...意地悪だなぁ先生。分かってるくせに」
「さぁな」
知らないふりをしてるけど、きっと伝わってる。
ズルい。本当に先生はズルい。
「今日は教えません！またいつか教えますよ」
「じゃあ、お前が卒業する時に教えてな」
「...そんな遅くていいんですか？」
貴方は少年のような笑顔をして私にいった。
「その時じゃないと何もしてやらないからな」
「...はぁい」
なんだ、伝わってるじゃん。
嬉しくて、また私は声を出して笑った。
用件/佐賀美陣
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作者名：enst青春合作 x他9人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年5月20日 21時
