濡羽色のワルキューレ【あんスタ】 (ページ2)

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プロローグは煌びやかに【２】ページ2

彼女は英智と同じ生徒会の一員でもある。以前通っていた学校でも生徒会員をやっていたらしい。
普段使用している机に歩み寄り忘れ物を探し始める。やはり女子だからか他の机よりも整頓されていた。

暫くして引き出しから書類を取り出す。
どうやら忘れ物というのは生徒会の仕事に関する書類だったらしい。

書類を見つめて彼女はため息をつく。この様子だと今夜は徹夜ルートなのだろう。プロデュースのことでも忙しいのだから少しは休んでほしいものだ。

「で？英智はどうして残っているの？貴方の事だからただ居残りがしたかった訳じゃなさそうだけど…」

「ううん、ただ残りたかったのは本当なんだ。普通の学生みたいに。…でも、一人でこうしていると悩み事が沢山出てきてね。
…ねえA。僕はどうしたらいいんだろう。どうしたら、この学院を救えるのかな」

「……そうね、やはり統治者が居ないのが一番の問題でしょう。纏める者がいなければ、国民は好き放題に行動して国を壊してしまうわ。絶対的な権力者が必要不可欠ね。

後は…、少し酷い言い方をするようだけど荒くれ者(奇人)達には制裁が必要だと私は思うわ。彼らをどうにかしなければ他の生徒たちの居場所が本当に無くなってしまう。…貴方の好きな日々樹くんを傷つけることになってしまうのは、少し心苦しいけれど」

Aは申し訳なさそうに英智から目線を外す。そんな彼女に英智は驚いていた。英智が長い間悩んでいた事柄をこの場で例を挙げてつらつらと答えたからだ。まるで以前からそれについて考えていたかのように。

英智は、彼女も自分と同じ悩みを抱えていたのだと納得した。奇人らに対する考えが少しばかり現実味を帯びていたのが引っ掛かっていたが。
実際、彼女も言っていたように彼らを何とかしなければこの学院の修復は出来ないのだろう。

生徒会室に沈黙が広がる。英智は何か声を掛けようと思ったが彼女がそれを制した。いや、ただ彼女の方が口を開くのが早かっただけで別に制した訳では無いのだけど。

「夜も遅いし、帰りましょう。英智」

眉を下げて笑う彼女は初めて見た気がする。英智は少しだけ得な気分になった。僕以外は知らない、彼女の新しい顔。騎士の王様あたりは嫉妬しそうだな。オレンジ髪の彼を想像して笑みが零れた。

このまま彼女を家に返すのは流石に危険だったので車で送っていくことに。車窓から見えた星たちが羨ましそうに僕を見つめているような気がした。