【あんスタ】NightTime-Parade!!【短編集】

恋い焦がれてキャラメリゼ／逆先夏目 ページ25

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もう随分と傾いた太陽は、未だにアスファルトを焦がしている。

通学路の途中にある小さな公園を通り過ぎようとした時、辺りに響く声が聴こえた。それは、鈴のように軽やかで。それでいて好奇心を擽られるような、そんな魅力があって。一度溢れた好奇心は止められない。見れば、ひとりの少女がいた。

サクリ、と地面を踏んだ音はどうやら聴こえたらしい。振り向いた彼女と目が合う。
ボクよりも先に、あの声が響いた。


『…逆先くん、でしょう？』


アイドル科の、と小さく付け足した彼女はどこか寂しげな笑顔を浮かべていた。

まさか、彼女がボクのことを知っているなんて。少し動揺したのは秘密だ。


「…うン、そうだヨ。それにしても演劇科の姫君に知られているなんて光栄だネ…♪」

『そんな、姫なんて大袈裟ですよ。私なんかより逆先くんの方が余程…』


演技ではない、なにか微妙な感情の籠った彼女の言葉に妙な引っ掛かりを覚えた。


「…ボクはそんなに出来た人間じゃないヨ。」


あの人が認める才能を持ち、自ら舞台に立てる君とは違う。

そう言いたかった、のに、

『だって、逆先くんは日々樹先輩の弟子なんでしょう？』

遮られた言葉には微かな羨望が混ざっていた。
先程とは変わって幸せそうな君の笑顔を見てしまえば気がつかない方が難しい。

…そうか。君は渉にいさんが好きなんだネ。


「そうだけド…ソレ、凄いのはボクじゃなくて渉にいさんでしょウ？」

『あっあの、そんなことないですよっ！？日々樹先輩も勿論ですけどっ、』

「フフ、別に否定しなくてもいいヨ？」


やはり図星のようで、面白いくらいに動揺する彼女は可愛らしかった。

そのとき、ふと彼に観劇に誘われた日の事が頭をよぎる。

“…ええ、彼女は天才です！！観客までも劇中に巻き込むような魅力がありますからねぇ…？まさしく魔法のようです！！どうです？行きたくなったでしょう？さぁ、夏目くんも一緒に行きましょう♪ほら、早くしないと始まってしまいますよ☆”

断る暇もなく強引に連れて行かれたのに、彼の言うとおり、魔法のように彼女に惹かれたのだ。


「…ねェ、渉にいさんの話聞きたイ？」

自然と言葉が滑り落ちた。

『え、…良いんですか？』

こんな話題、ボクにとって何の利益もないのに。ただ君の笑顔を手放したくなくて、

「まァ、ボクの知っている限りだけド。」

『…ぜひっ、聞きたいです！』

じゃあ、また…なんて約束を取り付ける。

例え、らしくなくても目の前にある糸に縋るしか思いつかないほどにボクには余裕がないのだ。

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