鬼気森然の夜/第五話 ページ38
「策は成った。『本命』への引き継ぎは頼んだぞ、我らが同胞『2wink』よ!」
手を広げ、舞台上で次なる侵入者を大々的に招いた零さんに応えるように、地面に足が縫い付けられた私の両傍を影が駆け抜ける。それは確かに朔間零の使い魔で、森然としたこの夜に相応しい、双子の悪魔のはずだった。
スポットライトが迎えに行くのを待つまでもなく、影は自ら光の中に飛び込んでいく。踊るように二人はアクロバティックに入れ替わり、観客に息を着く間も与えず、目まぐるしい変化を遂げる。そして瞬きする間に……影は、輝きに生まれ変わった。
「呼ばれて飛びでて♪」
「じゃじゃじゃじゃ〜ん♪」
音楽も照明も激しく、毒々しい刺激だった舞台演出から一転、ポップなメロディとカラフルなカラーフィルタを通したライトが講堂全体を彩る。
『2wink』には、申し訳ない立ち回りを頼んでしまった。零さんたちはきっちり持ち時間いっぱいのパフォーマンスをしておきながら、彼らには『Trickstar』の紹介じみたことだけして捌けてもらわなければならない。得点はほとんど『Trickstar』に持っていかれるだろう。
けれど、ふたりとも厭わなかった。日頃お世話になっている朔間先輩の頼みだからと、そればかりか、私を巻き込んだ直接の原因は自分たちにあるからと。
『前も話したけど……あの日、部室に連れてくるよう頼まれたのは、転校生さんだけだった。A先輩も連れてったのは、俺たちの勝手な判断です』
『A先輩は朔間先輩の大事な人なんだと思ってね。それが間違ってたなんて思いませんけど、結果的に、あなたを巻き込んじゃいましたから』
そんな風に、悪戯な印象からは似合わず申し訳なさそうにして、初めてのライブを脇役に全振りしている。
誰のせいとか、原因とか、私はそういう話が苦手だけれど、彼らの誠意を無駄にしてはいけないと思った。
だからこそ彼らの出番を見逃すまいとステージに意識を戻すと、蓮巳くんは不服と言いたげに怒りを顕にしている。
「貴様ら、ドリフェスの後にこの学院に居場所があると思うなよ!」
「ひとの行く末をあれこれ言うとる場合かのう、このドリフェスの前と後では学院の気風はがらっと変わるかもしれんぞ?」
やはり『紅月』は状況を認めない。予定調和の伝統芸能が主たる武器の彼らにとって、ここまでのイレギュラー続きは相当なストレスになろう。そして、彼にトドメをさしたのは「前座がもたつくとダレちゃうでしょ」というゆうたくんの言葉だった。
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更科(プロフ) - あひる様さん» お返事遅れてしまってごめんなさい。読んでくださる方がいる限りは頑張ってみようと思います。応援ありがとうございます。 (2021年5月28日 23時) (レス) id: 749f88a822 (このIDを非表示/違反報告)
あひる様 - やばい!物凄く!!!好きですぅううううう!!!頑張ってくださいっ!!!!応援してます!!! (2021年5月20日 23時) (レス) id: fee7c2866e (このIDを非表示/違反報告)
更科(プロフ) - 姉系チート2号(データ消えちまった成)さん» こんにちは。わざわざコメント頂きありがとうございます!今は更新が難しい状況なのですがきちんと書きたいという思いはありますので、ゆっくりお待ちいただければと思います。 (2020年2月3日 11時) (レス) id: 749f88a822 (このIDを非表示/違反報告)
姉系チート2号(データ消えちまった成)(プロフ) - 達筆な文章に惚れました!無理はしない程度に、更新を楽しみにしています! (2019年12月17日 13時) (レス) id: 41a0229c91 (このIDを非表示/違反報告)
更科(プロフ) - さくぷらさん» さくぷらさま、コメントありがとうございます!返信が遅くなり申し訳ありません…。儚く透明感のある主人公を目指しておりますので大変光栄なお言葉をありがとうございます。ゆっくりになってしまいますが更新頑張ります! (2018年3月29日 11時) (レス) id: d6f890f9ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:更科 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月29日 18時