朔間零の独擅場/2(sideニナ) ページ14
「……は？」
思わず、声を漏らしてしまった。しまったと思う間もくれず、目の前で私を睨みつけている彼は言葉を続ける。
「本当は、お前が余計なことをしなかったらAの手伝いをするつもりだったんだけどな？……まあ、こっちが動かなくても自分から来てくれた点についてだけは、評価してやるよ」
老人のような雰囲気が一変した彼を、私だけでなく周りのメンバーたちも驚いた顔で見ている。が、そんなことは気にしていないかのように、ふっと笑みをこぼした彼は一歩前に出た。
「真実に気づいたのは、結構ギリギリだった。初めは色々疑問もあったし？それより、俺の可愛い後輩たちを随分騙してくれたじゃね〜か」
「……何を、」
「とぼけんじゃね〜よ。テメェが演技してたことなんて、初めっから気づいてんだよ」
そう言って、彼は自分の後ろで固まっていた銀髪の少年を見やった。
「＿＿＿＿ウチの犬は、鼻が良くてさぁ？お前の胡散臭い匂いにいち早く気づいてくれたんだよ」
……コイツは、全て知った上で、私に騙されたフリをして、Aを傷つけ、距離を離していた。それを理解し、カッと頭に血がのぼる。
「私を騙したの？」
「お互い様だろ〜が」
＿＿＿＿許せない。この私を騙していたなんて、許せない。演技をしていたことも忘れて、私は口を開いた。
「何の為に？あの子を守る為？」
「それは勿論。理由は他にもあるけどな。俺の可愛いAに手を出そうとしたんだから、相応の報いを覚悟しろよ」
「……証拠もない癖に、あんたに何が出来る」
「お前のその本性が、何よりの証拠だろ」
そこで彼は、愉快そうにくく、と微笑んだ。
「ちょ〜っと考えたら、俺がお前のことを騙してることぐらい気づいただろうに。Aを陥れることに精一杯だったか？」
返事の代わりに、彼を睨みつける。すると彼はとどめのように、普段通りの、優しく綺麗な笑みを作った。
「＿＿＿＿我輩がお主の名前を呼んだことが、一度でもあったかのう？」
＿＿＿＿いつかのライブの夜も、私に愛を囁くときでさえ。
こいつはいつだって、私のことを「嬢ちゃん」としか呼ばなかった。
本当にこいつは、初めから＿＿。
「……さあ。そろそろAと衣装の場所を教えてもらおうか」
ゆっくりと、彼は私に迫ってくる。ここで捕まれば全てが終わりだ。
そんなの許さない。斯くなる上は、他の奴らを利用するしかない。
彼が腕に触れる寸前にその手を振り払い、私は部屋を飛び出した。
邂逅/1(sideニナ)→←朔間零の独擅場/1(sideニナ)
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べベンべエエェェ - また戻ってきました！この作品がお気に入りになってどの小説の設定も星川、というのを使わせて読ませてもらってます！ありがとうございます！ (2022年6月9日 23時) (
レス) @page29 id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
ベベンべエエェェ - またニナが足を洗って帰って来てほしいかなと思います。続編が出来たらとっっっっぅても嬉しいです (2021年8月4日 21時) (レス) id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
CloveR(プロフ) - 面白すぎて2日で読み終わりました……。（続き気になりすぎて2日とも5:00くらいまで寝れなかった）寝る前に読んだの後悔するくらいおもしろかったです…！ (2021年7月29日 3時) (レス) id: f7412586d4 (このIDを非表示/違反報告)
髪様 - ゆうさんと同意見です，完璧ですわあ、、、、 (2020年5月8日 11時) (レス) id: a311e75dfe (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - なんだろう、なんて言えばいいかわかんないんですけど...完璧な小説でした (2020年4月25日 18時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
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