カヴァレリアの大劇場/4(side友也) ページ44
「……そっちが、ぶつかって来たんじゃん」
嫌厭を含んだ反論。Aにしては低い、地の底を這うような声音に、朱桜は顔を歪める。
いよいよ、雨が降ってきた。
「何を、」
「だから、私は悪くないし」
吐き捨てた彼の言葉を遮って、Aは無表情のまま至って冷静に答えた。ぎり、と朱桜が強く唇を噛むのが、この距離からでも見てとれた。
「……此の期に及んで、良く言えますね」
「＿＿＿＿どの口が言ってんの？」
ふと、間延びした瀬名先輩の声も横から差し込まれる。月永先輩の後ろに控えていた彼は、すっとAの正面まで出てきた。至近距離で表情を凍らせる瀬名先輩を、Aは静かに見上げる。
「私は悪くないって？今までしたことを、一つずつ思い返しなよ。ニナを傷つけてさぁ、それがばれたからって反省もしないで＿＿＿＿あまつさえ開き直って、仕事を真面目にしないような奴に全部を任せた、頼ってた俺らが馬鹿だった」
なんで生きてるの、と。相変わらずの口の悪さだけれど、いつも以上に辛くあたる彼の怒りは、握られた拳を見れば分かる。
「……友ちゃん」
不安そうに呼びかけてくる光を手で制す。とめるべきなんだろうけど、俺たちじゃ火に油を注ぐだけ。大人しくに〜ちゃんを待つのが賢明だ。
＿＿＿＿遠くで鳴っていたはずの雷が、すぐ近くで鳴っている。すぐにでも落ちてしまいそうなそれは、今のAたちの心情を表しているようだった。
まさに、一触即発。
「……本当に。こんなのを信頼してたなんてねぇ？残念ながら、俺たちは悪者の味方なんて出来ないの。ニナを守らなきゃなんないし」
今まで俯いていた凛月先輩も、顔をあげる。＿＿＿＿あんなにAと仲の良かったknightsが。いや、仲の良かったからこそ、だからか。
信頼していた人物が、自分たちを嫌っていて。椎名みたいな素敵な人を傷つけていたのを知ってしまったら、裏切られたと思うのも、許せない気持ちも、俺にだって理解できる。
Aだって、こんなところいづらいだろうに。周りも、Aの味方をするやつなんて誰一人いない四面楚歌。……なのになんで、出ていこうとしないんだ？
＿＿と、睨むknightsの面々を前に、Aはふっと嗜虐的に笑った。初めて見る表情に、背筋がぞくりと泡だつ。
「＿＿＿＿本当に、馬鹿ですよね」
その、瞬間。
ぱん、という乾いた音が、食堂中に響き渡った。
「……え」
一転、暗幕が下りる/5(side友也)→←カヴァレリアの大劇場/3(side友也)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 876人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
＊雫莉＊⇔梓(プロフ) - ぷかぷか先輩がニナちゃんの香りを…消そうと…翠くんに水を掛けたところで何かぷかぷか先輩かっけぇ…ってなりました(表現あってるのかな…；；) (2018年4月6日 1時) (
レス) id: 9615cd5628 (このIDを非表示/違反報告)
無気力兎 - ヤバイなずにゃんヤバイイケメンヤバイ (2016年11月12日 19時) (レス) id: eaf91ea410 (このIDを非表示/違反報告)
霧崎(プロフ) - まめだいふくもちさん» 溶けないでくださいよ？！笑こちらこそ続編もたのしませて頂きます！！ (2016年11月6日 10時) (レス) id: fb501c66b2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 霧崎さん» やったぁありがとうございます♪( ´▽｀) そこまで言っていただけると嬉しくて溶けます笑 頑張ります〜！続編でもよろしくお願いします！ (2016年10月29日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 芽卯さん» わ〜！ありがとうございます…！！夢主さんたちだけでなく私まで応援ありがとうございます、そのお言葉のおかげで頑張れます♪( ´▽｀) (2016年10月29日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
