【あんスタ】進軍する騎士と爛漫の姫君(1)

勘違いから拗れる仲/2(side凛月) ページ38

「あ….…汗！？」

ニナが困惑している。そりゃそうでしょ、兄者の汗はトマトから出来てるの？

なにをそんなに動揺しているかはわからないけど、これは非常にまずい。兄者がどう思おうがどうでもいいけどさ、うざ絡みされたくはないんだよね。

「朔間先輩、拭いてください。返さなくていいですからっ」

ニナが制服のポケットからハンカチを差し出した。花柄の、薄桃色の可愛らしいハンカチだ。さすが細部まで女子力、抜かりがない。……じゃなくて。

「ちょっと兄者、なにぼさっとしてるの？用がないなら、とっとと消えてくんない？」

ここはまず、兄者をこの場から離れさせることが最優先だ。

「凛月先輩っ、そんないいかたはないですっ。兄弟なんですから、仲良くしましょう、ね？」

あー、うっざい。両手を合わせて笑みを浮かべるニナに、今世紀最大にイラっとした。兄者と仲良くしろ、って話題は禁句ね。

不機嫌オーラを立ち昇らせる俺の前で、兄者は言われるがままニナから受け取ったハンカチを握りしめてつったっていた。大丈夫、こいつ？フリーズしてない？叩けば直る？

「……仲、良いんじゃな」

「は？」

兄者が絞り出すようにいったのは、その一言だった。つい、否定してしまいそうになる。違う、そうじゃなくて。

「……そうそう〜。俺、ニナと仲良しなの。ニナはねぇ、俺のこと甘やかしてくれるし、優しくしてくれるし、大好き〜……♪兄者には、やらないからねぇ？」

ニナの腕に腕を絡めて、兄者にいいはなつ。何が悲しくて実の兄相手に大嫌いな女とのイチャラブみせつけなきゃなんないの。

「り、凛月先輩っ、止めてください！人前で、恥ずかしいですっ」

ニナが真っ赤になって言う。ああもう、そんなに赤くならないでよね。あんたはヤカンなの？

「……そうか」

兄者は頷くと、ニナに手招きをした。ニナが離れてくれて、内心ホッとする。

「ハンカチありがとう、嬢ちゃん。ちゃんと洗って返すからのう。……ところで我輩、ちょっと凛月と二人で話したいのじゃ。すまんが、席を外してくれるかの」

えっ。

「……？はい、わかりました」

ニナは不思議そうにしながらも、俺に手をふって歩いていく。


まって、話って、何。

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