木陰の遭遇/3 ページ6
突如聞こえた声に、勢いよく顔をあげる。しかし見回しても、先ほどの女の子たちすら見当たらない。
……幻聴？
そう思った、ときだった。ここ、と短い声がして、そちらに顔を向ければ、大きな広葉樹。何年も昔から学院に生えているらしい木だ。
その、木の中から声がした。……木が喋った。
新たなオカルトなのかそれとも私が狂っただけなのか、なんて考えていれば、ガサガサと木が揺れて何かが着地する。
艶やかな黒髪を振り乱しながらも華麗に地面に降り立った彼を見て、私はひゅっと息を飲んだ。
「よぉ、昨日ぶり？」
ひらりと片手を振り、彼はにこやかに笑う。間違いなく、昨日私がぶつかってトマトジュースをぶちまけた「彼」だった。
目にかかった前髪をかき分ける仕草も厭に優美な彼は、固まる私に向かってスタスタと歩いてくる。なんでこんなところに。なんで、私なんかのことを覚えてるの。
怖すぎて声も出なくて、逃げることも出来ない。近く距離はだんだんとせまくなって、ついに目の前にたった彼は、あのときと同じように腰を折って私に目線を合わせた。……かかかか、顔が近い。
「……ん、やっぱり間違いない。なぁおまえ、昨日から思ってたんだけどよ……話せね〜の？」
開口一番に何をいうかと思えば、余計なお世話です。
気にしていることを人から指摘されるのが、一番嫌だ。だからこそ私は、いろんなことから逃げてしまっているんだけど。
目を逸らして俯いてしまった私を、彼はどんな顔で見ているだろうか。
「まぁいいや、今日は逃がさね〜からなっ♪」
軽快な口調とともに、彼はがっしりと私の手首を掴んだ。やけに強いその力に、やっぱりここで死ぬのか……なんて物騒な考えが浮かんでしまう。
コンクリート詰めにされて海に流されるか指を切られるか……ともかくやばいことになるのは事実。夢ノ咲の制服こそきているけれど、この人は何科なのだろうか。普通科にこんなやばい人がいたら、いくら俗なことに鈍感な私でも知っているはず。
……でも、今日の彼はあまり怖くない気がする。にこにこと穏和に笑っている顔が、なんだか優しいからだろうか？いやでも、油断させるためかも。現に、すごい力で手首を掴まれてるわけだし。
と、彼はぐいっと私の手首を引いた。それから「手、開いて」と一言。恐る恐る開いた手に、彼はぽんっと何かを置いた。……え。
「……ふ、封筒……？」
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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