幕間 ページ49
病室の扉を開けると、柔らかな風と共に消毒液の匂いがつん、と鼻をついた。
「ああ、いらっしゃい……つむぎ」
シミも皺も一つもない、純白のシーツで下半身を覆い、上半身だけを起こしてこちらを見て微笑むのは英智くん。
今年同じクラスになったはいいものの、病弱らしい彼は体調を崩すことが多く＿＿＿＿ここ数日、暫くふたたびの入院生活が続いていた。だからこそ、俺がクラス委員長としてプリントなどを届けに来ている。そのついでに、学院であったことなどをちょこちょこと報告したりしているのだ。
ベッドから離れられず、学院に来られない英智くんはとりわけその話が楽しみなようで、瞳をキラキラさせながら聞いてくれる。無邪気な子供みたいで、とても可愛らしいですよね＿＿＿＿。
「それで、つむぎ。最近学院はどう？」
「はい！いつも通り平和ですよ〜。ただ、ちょっとごたごたはありますけどね。大したことはないです、大体のことは零くんが解決してくれますし」
「零……ああ、朔間先輩のことだね」
そうか、英智くんはあまり姿を見たことがないんでしたね。心の中で納得してから、俺は頷く。
「そうです！あの人、とっても凄いのに、俺みたいなゴミ虫にもフレンドリーに話しかけてくれるんですよ〜♪」
「つむぎは自分のことを卑下しすぎだと思うのだけど……。ふうん、やっぱり彼は凄いね」
「はい！まあ、むちゃくちゃな行動も多いんですけどね……。そうです、むちゃくちゃといえば零くん、最近普通科の女の子を連れ込んでるみたいで」
女の子。そう呟いて、英智くんは透き通るような瞳を瞬かせた。それもそのはず。なんたってアイドル科には男子しか入ることしかできないし、一般人などもっての他。
「駄目ですよって注意したんですけどね、随分お気に入りみたいで。若い子は楽しそうでいいですよね〜」
「仮にも朔間先輩は年上のはずだけれど、君は何目線なんだい……？」
そう言って英智くんがふっと笑ったので、俺も笑いかえす。それから話題はさらに移り、とうとう時間になった。
「じゃあ、そろそろ俺は帰りますね」
「うん。いつもありがとう、つむぎ」
渡したプリントを膝に乗せ、にこりと微笑む英智くんに手を振って外に出る。かちゃ、と引き戸が閉まり、あっという間に英智くんは見えなくなった。
「……ふうん。『朔間零のお気に入りの女の子』かぁ」
だから、英智くんがこんなことを呟いていたなんて、俺は知らない。
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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