魔法にかけられて/2 ページ45
「＿＿＿＿ただし、一つだけ。一つだけ自分に自信を持てる何かが出来れば世界は変わります」
かつり。渉さんの歩く靴音がやけに頭に響く。
「貴方は天才ではないのですから、苦手なことを全て克服しようだなんて無謀なことを考えなくても良いんです。だからといって、否定はしませんけどね。無謀なことに挑戦しようとする心意気は実にAmazingですから！」
ふははは、と大きく笑って、渉さんは振り返る。先ほどと変わらない、太陽のような笑顔。
「ただ一つ、胸を張って自慢出来るものを作りなさい。それだけで全てが変わります！」
両手を広げた渉さんから、赤い薔薇がとびでてきた。全身で愛をささげているようなこの人は、零さんに似ているようで似ていない。
どこが違うかと聞かれれば、明確には答えられないけど。
「……自慢出来ること……って、どうやって見つければ？」
「そうですねえ。他人を驚かせられるような技術なら私が教えられますし、無償の愛なら零から学べます。……ですが」
ちらりと、紫水晶が私を見た。「その髪は宗ですか？」この人、宗さんとも知り合いなんだ。そうです、と頷くと、彼はにっこりと笑う。
「素敵な髪には美しいドレスを、そしてそれを纏うのは貴方です！手始めにこの日々樹渉が、貴方を
いうが早いが、渉さんは私の手をとり瞬く間に私をソファーに座らせた。思ったよりふかふかとしたソファーに驚いていたら、渉さんはガラガラとワゴンを運んでくる。
「メイクをした経験は？」
「……全く」
俯いて答えれば、「顔をあげなさい」と静かな声が降ってきた。先ほどの意気揚々とした声音とは違って、冷たい声だったから。びくりとして顔をあげると、予想外にもそこにあったのは笑顔だった。
「俯かれては、魔法をかけることも出来ませんから。……さぁさぁ、目を閉じて」
言われるがままに瞳を閉じる。髪の毛があげられて、それから顔に冷たい感触が触れた。これは、クリームかなにかだろうか？
「まだ若いうちは、あまりベースメイクは必要ないのですけれどね。最低限、玉のお肌を保てる下地は必要です」
続いて、ぱたぱたと顔に何かをはたく音。粉の匂いが鼻をくすぐった。ふんふん、と楽しげな鼻歌が聞こえてくる。
少しだけ瞳をあけたら、渉さんの藤色の瞳と視線がかち合って薄く微笑まれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
