愛に花束/1 ページ42
「おう、遅かったじゃね〜か」
軽音部室に何故か設置されている、黒塗りの棺桶。その中から半身を覗かせて、零さんは顔に乗せた雑誌の隙間からちらりと私を見た。
「また迷ってたんだろ。おまえはいつになったら道覚えんだよ〜、ん？」
返す言葉もなくて、苦笑いを返す。すると零さんに、笑ってんじゃね〜よと頭に乗せていた雑誌で軽く頭をはたかれた。
「どうせまた迷うだろって思ってさぁ、迎えに行ってやろ〜かと思ったんだけど……起きるのダルいし、なんか俺を見たって普通科で噂になってるらしくてよぉ。易々近づけなくなっちまったんだよな〜」
そういえばそうだった。というか、それを伝えようとしたのにすっかり忘れていたし、そもそも零さんは知っていたのか……。
まあ、「生徒会長」って役職についてるぐらいだから顔も広いのだろうし、情報も良く伝わって来るのだろう。……生徒会長らしくない容姿だけれど。
一人で勝手に推測していたら、零さんに「A」と名前を呼ばれた。優しくて、頭を撫でられたときみたいな嬉しさに包まれる。
はい、と返事をすれば、何かを投げられた。しかしキャッチ出来なくて、額にぶつけて「いたっ」と声が漏れる。「ホント鈍臭いな〜、おまえは」あはは、と嬉しそうに笑う零さんに若干憤りを覚えながらも、投げられた何かを拾った。
「……わ、おかし」
それは、よくコンビニとかで見かける市販のチョコレート菓子だった。私も結構好きなヤツだ。
「それさ、貰ったんだけど……あんまりお腹空いてないし、おまえにやるよ」
「あ……ありがとう、ございます」
普通に考えたら押し付けられただけのような気もするけれど、零さんに物を貰えた、ということがなんだか無性に嬉しかった。思えば、人から何かを貰うの自体初めてかもしれない。
「……零さんは、私にいっぱい初めてをくれますね」
チョコレート菓子の箱を握る手に力を込める。囁き声だったから、さすがに零さんには聞こえなかったらしい。
今なんて言った、と聞き返された、その瞬間だった。
部室の扉が、大げさなぐらいに大きく開く。
「零〜♪」
愉快そうな声と共に部屋に入り込んで来たのは、大量の赤い花弁だった。ぶわり、と甘い薔薇の香りが部屋になだれ込んで来て、開いた窓から吹き抜けていく。
「……渉」
煩わしげに呟いた零さんの視線を追って、私は入ってきた声の主を見た。
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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