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「さぁ、どうだ」
髪を切り始めて数十分。斎宮さんの一言に、恐る恐る顔をあげて鏡をみる。
胸より少し上の位置で、丁寧に切り揃えられた髪。まとまりのなかった髪が落ちついていて、視界だって良好だ。
別人みたいに綺麗な髪をした私が、鏡の中から私を見つめ返していた。
「最初よりは大分マシになったのだよ。まあ、あくまで「マシになった」程度だが」
棘のある言い方をしながらも、斎宮さんの声は心なしか嬉しそうだ。それこそ、私でも分かるぐらいに。綺麗に切れたのが嬉しいのかなぁ、なんて思うと、失礼かもだけど可愛くみえてくる。
「仁兎と比べたら天と地の差があるけれどね。まあ、他人が見れるレベルにはなっただろう。零のところに戻るとしようか」
にと、って誰ですか。朔間さんも斎宮さんも、すぐ知らない人の名前を出してくる……！
とりあえず頷くと、彼は歩き出そうとして……それから、扉の前でぴたりと足を止めた。
「しまった、片付けをしなければならないね。だけど、片付けていたら時間がなくなるし……君は一人で軽音部室に帰れるかい」
なんだかんだ案内してくれるつもりだったのが優しいな、なんて思うけど。一人で帰れるか、といわれたら大分怪しい。なにしろ私は方向音痴なのだ。
私が無言になっていたら、ふと、斎宮さんの背後の扉が開いた。
入ってきたのは、一つの細身の人影。
黄金を延ばしたように輝く金糸の髪に、白魚のごとき肌。真っ赤なガーネットがはめ込まれたような瞳と、淡く朱色に光る小さな唇。
それは一言で言えば、人形みたいな少女だった。
見とれていた私は、斎宮さんの「仁兎！」というさけび声で我に返った。
「ああ、仁兎！今日も美しいね、さすが僕の最高傑作だ！」
私と話していたときとは大違いだ。嬉しそうに、斎宮さんは昂ぶった口調で仁兎、と呼ばれた少女に近づく。
しかし、彼女はそんな彼を軽くあしらうようにしてゆるりと部屋を見渡し、私に視線を止めた。その瞳が本当にお人形さんみたいに無機質で、どきりとする。
仁兎さんは斎宮さんの袖を軽くひくと、私を指差した。「ん？……ああ、あれが気になるのか。少し友人に頼まれてね、髪を切ってやっていたんだ」そこで、彼は手を打った。
「そうだ、仁兎。悪いが、彼奴を軽音部室まで帰してやってくれ。僕は部屋の片付けをしなければならないからね」
全く影片はこんなときにいない、と憮然とする斎宮さんを見上げ、仁兎さんはこくんと頷いた。
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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