【あんスタ】プルメリア・ナハトムジーク〈1〉

トマトジュースと白いシャツ/1 ページ2

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物語の主人公になれないことなんて、小学校に入ってすぐに気がついた。






絵本の中のお姫様もヒーローも夢物語で、現実はいつだって上手くいかない。
勉強や運動が出来ないのはもちろんのこと、かなりの不器用な上に口べたで、だからこそ友達なんて生まれて15年間一度もできたことはない。

このまま一人で死ぬんだなって、どこかぼんやりと考えていた。

それに加えて不幸体質なのか、今日は歩いていたら空から小鳥のフンが落ちてきたし、お弁当はひっくり返すし、全員分のプリントを運んでいたら窓の外に飛ばしてしまう始末。

迷惑だと、クラス中の目がいっている気がした。

だから、だから＿＿＿死んでしまいたいと、常に思っていた。私なんていなくなっても誰も困らないんだから。

消えていなくなってしまいたいって、たしかにそうは思っていたけれど。

「…………」

＿＿＿＿じとり、と落とされた視線に、私は震える足を最後の根気で支えるのが精いっぱいだった。

目の前には、息を飲むほど美しい美貌。艶やかな、黒檀を伸ばしたかのような黒髪に、どろりと溶けた緋色の瞳。その瞳が不機嫌そうに細められて、まごうことなく私を見ていた。

そして、すらりとした体躯を包む白いカッターシャツには＿＿べっとりと、血のように赤い液体がついている。

「……おい」

呼びかけられて、体がびくっと跳ねた。

拝啓、神さま。死にたいとは言いましたが、殺されるのは嫌です。

ことのおこりは、先程。学院の校門を出て、いつものようにまっすぐ帰っているときだった。後ろから高らかな声がして、振り向くと校舎前で何やら大道芸のようなものが開かれている。
人は見えないけれど、人だかりの真ん中から鳩やから紙吹雪が飛んでいるのが見えるかぎり、マジックでも披露されているのだろう。驚くことはなかった。それほどここ「夢ノ咲学院」は素っ頓狂な科や人で溢れているのである。アイドル科か、はたまた演劇科か＿＿＿＿＿＿そんなことを考えながら、歩いていたら。

どん、と軽い衝撃に、体が蹌踉めいた。続いて、ばしゃっと何かが溢れる音。

触れたシャツが目前で赤く染まっていくのを視認するなり、私は飛びのいた。

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