目と目が合う/2 ページ21
突然後ろから聞こえてきた声に、びっくりして大きく仰け反った。がん、と壁に足をぶつけるというわけのわからない失態まで起こしたし、私は今日怪我しすぎじゃないだろうか。
「……いや、びっくりしすぎだろ」
声の主、朔間さんは____私を見ると、口もとに手を当ててクスクス笑った。なんだかいつもはみない静かな笑い方で、こんな風にもわらうんだと思えば心臓が高鳴る。
……かっこいい人って羨ましいよね。笑うだけで周りを幸せに出来るんだもん。
私が笑ったって、不気味に思われるか「うわあのブス笑ってる」と嘲笑を受けるだけだろう。
「おまえがあんまりにも扉の前で挙動不振だったからさぁ、不審者かと思っちゃったんだけど。道に迷わなかったか〜、ん?」
まるで子どもに対するように____いや、違う。まるで子犬とかの動物に対するように、朔間さんは言う。
「あ……えと、案内して、もらって」
「あ〜、なるほどな」
良かったじゃね〜か、と部室の扉を開けながら彼はケラケラと笑う。「で、どうだった?宗、あいつすげぇだろ」誇らしそうにいう朔間さんに、私は強く頷いた。
部室に入った朔間さんは、棺桶におもむろに腰掛ける。そういえばなんでそとにいたんだろうか、などと考えていたら、彼はちょいちょい、と私を手招きした。
「もうちょっと、こっちこいよ。よく見せて」
言われるがままに、棺桶の側に近づく。そういえば髪を切ったんだった、なんて言われるだろうか?
……もしかしたら、わりと可愛いとか、褒めてもらえたりするかもしれない。
私みたいなやつが烏滸がましい妄想かもしれないけれど、朔間さんの好みに合わせたのだ。いや、別に変な意味とかではないけど!
なんて、心の内で一人でいいわけしていたら。数秒間黙りこんで私を見ていた朔間さんが、漸く口を開いた。
「……まぁ、いいんじゃね〜の?」
その、一言だけ。それから彼は、「次はどうするかな〜」と傍らにあったジュースの蓋を開け、飲み始めた。
……う、うん、分かってましたよ?やっぱり私なんかが変な欲望を抱くこと自体間違いだったよね!
「いいんじゃない」の一言だって、私が思ったよりブスだったからフォローしただけかもしれない。むしろそれしかない、消えてなくなりたい……!
呆れるほどあり得ない妄想をしていた自分を殴りたくなって、私はそろそろと目線を床に落とした。
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました! (2017年10月29日 15時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか? (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます!とてもとても嬉しいです…!私もれいさんにプロデュースされたい!という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…!もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません!笑 続き楽しみにまってます!更新頑張ってください! (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜!ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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