【あんスタ】プルメリア・ナハトムジーク〈2〉

デート/4 ページ27

ライブハウスを出た後にやってきたのは近場のカフェだった。唐突に「腹減った」といいだした零さんに何が食べたいか聞かれて、お腹は空いていたものの特に何も思い浮かばなかった私はとっさに目についたカフェを指差したのだけど……。学んだ、次からは色々お出かけスポットを調べてから来よう。いや、そもそも次があるのか分からないけど。

「お待たせしました、デミグラスソースオムライスと生ハムサラダです」

注文から15分程度で、私の頼んだオムライスと零さんの頼んだ生ハムサラダがテーブルに乗せられた。にしてもこのお店、雰囲気が洗練されすぎている。BGMは落ちついた洋楽だし、オムライス一つにいたってもオムレツがドレスみたいに巻かれていて、よく分からないけどとってもオシャレで謎の引け目を感じる。

一方で零さんは生ハムサラダを目の前に(そういえば好物って言ってたな)嬉しそうに破顔していた。というか、お昼ご飯、それでいいの……？ダイエット中の女子……？

「れ、零さんは結構少食な方なんですか？」
「ん？や、別に。俺、肉とか好きなんだけど……夏目とかにも、にいさんは見た目以上にばかすか飲み食いする〜って言われるし」
「じゃあ、それで足りるんですか……？」
「何で人の心配してんだよ、大丈夫だから。お前も、遠慮してないで食えよ」

促されるままに、オムライスを一口ぶんスプーンでくちに運ぶ。……あ、おいしい。
ちなみに、大食らいらしいのに何故か全然食べないのは零さんの話によると「昼間は調子が良くない為あんまり食べると気持ち悪くなるから」だという。……じゃあ、さっきの「腹減った」っていうのは、一体？

少し考えて、はっとする。もしかして零さん、私がお腹を空かせてないかって気を遣ったんじゃないだろうか。私に言わせるわけにはいかないから、って……。

零さんは、そういうさりげない細やかな心遣いができる人だ。もちろん行動のひとつひとつが目立つ人ではあるのだけど、誰にも気づかれないようなそれも沢山積み重なっていて、だからこそ多くのひとに慕われているのだと思う。こういうこと、聡明で視野の広い零さんだからできるんだろうな。

……でも、私にばかり気を遣ってもらって……零さんは、楽しいのかな。

「A」

そこでふいに、名前を呼ばれた。はい、と返事をするとともに顔を上げた瞬間、唇の端をぐっと指で拭われる。

「ついてた」

指についたソースを舐めとると、彼はふっと形の整った唇を少し引き上げて微笑んだ。


「あはは。なんか、小動物の食事を見てるみたい」


……こういうところもあるけれど！

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