喧騒/2 ページ20
「だから、あたしが一緒にお洋服を選んでもいいんだけど……やっぱり『デート』なら、男の意見も必要でしょ?」
嵐ちゃんがぽっと頰を桃色に染める。いや、あの、デートというか、いや、私も思ったけど、でも恐れ多いっていうか……!とか思いながらも口に出せず困っている私に対し、嵐ちゃんは目を輝かせている。あ、これ、多分私の意見は聞いてもらえない。
「は?いや、あんたがやればいいじゃん。なんで俺がこんなよく知らないガキのお世話しなくちゃならないわけ?」
「が、ガキ……」
一方で辛辣な泉さん。思わず彼の言葉を復唱すると、嵐ちゃんが噴き出した。そうしたら隣の泉さんには「何」と睨まれて、慌てて首を振る。これは「敵意はない」という意だ。
「まあまあ、泉ちゃん。可愛い後輩からの一生のお願いよ?」
「あんたが『可愛い後輩』なら、この学院の年下は皆可愛いけどねぇ。……でもわかった、ちょっと待ってて」
仕方なさそうに溜息をついた泉さんは、面倒そうに一度髪をかきあげてから部屋を出た。再び訪れた沈黙に、縋るようにちらりと嵐ちゃんをみる。すると彼は、「うふふ」と優しく微笑んだ。
「泉ちゃん、態度がキツいから……ちょおっと、怖いかもしれないけど。でもね、困ったことがあったらその解決方法を一緒に考えてくれるし、こんな学院でも真面目にレッスンとかして、頑張って……。最初にいったとおり、凄くいい先輩なの。だから、勘違いしないでね」
「……うん。嵐ちゃんが、そうやっていうなら……きっと素敵な人なんだなぁ、って思います」
まだ出会って一時間もたっていない私に、言えることじゃないと思うけど。それだけしか経ってないのに、化粧の仕方とか教えてくれたり、助言を沢山してくれる優しい嵐ちゃんの先輩だ。きっと、素敵な人なんだろう。
「ふふ。あたし、Aちゃんのそういう素直なところ大好きよ。出会ってまだちょっとしか経ってないけど、素敵なお友達になれそう♪」
私の言葉に、嵐ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。
数十分後、泉さんは相変わらずしかめっ面をしたまま戻ってきた。片手には大きなショップバッグをいくつか抱えている。つかつかと歩いてきた彼は、私にそのバッグを差し出した。
「これ。近くにある昔お世話になってた事務所に行ってきて、女物の服でいくつか良さそうなものを買い取ってきた」
「かっ……買い取っ……!?」
突然彼の口から飛び出た言葉に吃驚する。
……優しいと言っても、優しすぎない、嵐ちゃん……?
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萩(プロフ) - まめだいふくもちさん» まめだちふくもちさんが見てくれてるなんて(涙)。最初コメント見た時に変な声がリアルに出ましたw。ありがとうございます。もう、本当に、夢主ちゃんにお伝えください。草葉の陰から応援してるよ!…と。 (2019年8月27日 22時) (レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 萩さん» 萩さん、コメントありがとうございます。夢主ちゃんの味方をしてくれる方がいて夢主ちゃんも嬉しいと思います……!ここで言うのもアレですが、私も萩さんの作品を楽しみにしております。お体に気を付けて、更新頑張ってください。 (2019年8月26日 20時) (レス) id: 59bafee163 (このIDを非表示/違反報告)
萩(プロフ) - ごめんなさい、これだけ言わせてください。零さんかっけぇ。零さんの言葉ひとつひとつが重くて、夢主ちゃんにはとても大切なことなんだなと思いました。夢主ちゃん!頑張れ!私は!君の味方だぞ!(大声) 毎日この話を読んでは癒されています。これからも頑張って下さい (2019年8月25日 22時) (レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 厘さん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんの成長を温かく見守ってあげてください。同じ奇人Pにコメントいただけて嬉しかったです、ありがとうございます〜! (2019年8月13日 17時) (レス) id: 59bafee163 (このIDを非表示/違反報告)
厘 - …神様ですか?いや、神様ですね。ネガティブな女の子の成長とか見るの好きですし、三奇人の人達も大好きなのでこの作品に出会えて良かったです!熱中症に気を付けてお過ごしください、応援してます。頑張ってください!! (2019年8月12日 21時) (レス) id: 4d8a897ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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