太刀川隊のもう１人の射手。season５

射手。８話 ページ9

＊



「そ、記者会見。なんか詳しいことわからなかったけど、なんかその三雲先輩？が出てたよ〜」

「そ、っか……」



そのあと詩乃に代わって大輝が記者会見に繋がった流れを教えてもらった。




記者会見は今回の防衛戦の結果報告ということで行われた。

本部に侵入した人型近界民に通信室で６人殺されて、新型にＣ級が３２人さらわれてしまったこと。殉職した６名の職員にはお悔やみを申し上げること。有能な人材であり魅力ある人物を失ったことは、行方不明になってしまった３２名の訓練生も合わせて非常に大きな損失で、無念に思っていること。

ボーダー内部に犠牲者を出したという事実はボーダーの防衛力に疑問を呈する結果になるがそのあたりの認識について記者に問われると、

今回起きた戦闘の規模は４年半前の第一次近界民進攻のおよそ８倍だった。１２００人以上の死者、４００人以上の行方不明者を出した第一次侵攻の８倍の近界民が攻め込んで来たこと。かつての８倍以上の敵を相手にして被害は４０分の１だったこと。

そしてそこから訓練生にもなぜ緊急脱出の装備を付けないのかという質問に。トリガーはもちろん限りがある。湯水のように噴き出てくるわけじゃなくてお金と材料と人の手が必要になる。だからボーダー隊員全員につけることが出来ない。だから今まで近界民と闘う任務があったＡ級Ｂ級にのみ付けられていた。

今回の侵攻でＣ級が狙われた理由は「訓練生は緊急脱出が出来ない」と近界民に側に知られていたのではないかという質問。そしてそこから先月の上旬に市立第三中学校に近界民が現れた事件に触れられたこと。




あたしは近界民が第三中学校を襲ったときは遠征に行っていたから詳しくはわからないけど、三輪先輩からＣ級がボーダーの規則を破ってトリガーを使ったのだと伝えられた。Ｃ級は基本的にボーダー内部でしかトリガーを使うのを認められていない。

でも、それは結果的にたくさんの中学生を救うきっかけになったことになり、厳重注意という形になったということも訊いている。……まさか、そこから情報が漏れていたとは。でもミナもあたしのトリオン能力をラッドで知ったって言ってたし……。

やっぱり、けっこう前から侵攻の作戦は立てられていたんだ。何も気づくことができなかった自分に、心底腹が立った。ぎりと唇を噛んだあたしを見て、詩乃は慌てて力を緩めるように言ってくる。



「……じゃあ姉貴、続き言うな？」

「……ん、」



大輝の優しい声色に唇の力を抜いて耳を傾けた。

射手。９話→←射手。７話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す