射手。40話 ページ41
*
「Aっ、そっち行ったぞ!」
「はいっ!」
《しーちゃん、南西方向に200m先にバムスター1体》
「わかりましたっ!」
足も治ってすっかり復活したあたしは、再び太刀川隊の2人目の射手として活動していた。
下に敷いたグラスホッパーを勢いよく踏んで上へと飛ぶ。すると、少し離れたところで動くバムスターが視界に入った。……お、みっけ。
久しぶりに任務に参加したのは今日じゃなくて1週間前の話。……でも、攻撃を近界民にするのは今日が久しぶり。
理由は簡単。任務に参加しているのに、太刀川さんや公平先輩があたしに任せてくれないから。あたしが先に近界民を見つけても、先に始末してしまうから。今までは任せてくれてたのに。膨れるあたしに、ゆっちゃん先輩が“しーちゃんにまだ無理してほしくないんだって〜。過保護だよねぇ”って言っているのを訊いて謎が解けた。
……まぁつまり、あたしは太刀川さんや公平先輩に大切にしていただいていると言うことで。
それはもちろんとても嬉しいことなんだけど、あたし1人だけ蚊帳の外みたいな感じで嫌だった。完治して1週間の今日、やっと攻撃することが認められたらしい。
「……あ、モールモッドが1体増えちゃった」
しょうがないなー、と小さく1つため息。……なんだか、前よりも体が軽くなった気がする。今なら、どんなことでもできちゃいそうだ。……もちろん太刀川さんに勝つ、とか公平先輩に勝つとかは無理だけど。
あたしはまだ、もっともっと強くなれる。まだ、上へと行ける。前までのあたしだったら、自信なんてなかった。……でも、今は違うから。
この数ヶ月で、大切なことを教えてもらった。何度も挫けそうになったあたしを支えてくれた方がたくさんいた。遠回りだって何度もした。何度も泣いたし、悩んだし、周りが信じられなくなった時だってあった。
……振り返ればいい経験をした。
「アステロイドッ!!」
どんなに苦しいことや辛いことがあっても、あたしはもうだいじょうぶ。支えてくれる人の温かさも、人に頼ることも知った。……もう、逃げないって決めたから。
ずっとうじうじ悩んで立ち止まってた過去の弱い自分。その時間は無駄じゃなかったと胸を張って言える。どれも、あたしに必要な時間だった。乗り越えなくちゃいけないことだった。
これからあたしは、もっと強くなる。もっともっと強くなって、一人前の射手として公平先輩の隣に胸を張って立てるようにならなきゃ。
「お、やった!」
「……ふ、」
《しーちゃんさすが〜》
……そうすれば、きっと。
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受験生 - こんばんは、高校受験をあと一週間後に控えた受験生です。はい。なにやってんだ。勉強しなくちゃいけないのがわかってたけど、読み進める手が止まりませんでした。私も夢主みたいに乗り越えていきます。たくさん勇気を貰いました。ありがとうございました!!! (2020年2月24日 22時) (レス) id: 61c0c59d71 (このIDを非表示/違反報告)
岡本 珠理奈(プロフ) - いろえんぴつさん» そうなんですね!これからもよろしくお願いします! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 05e4939074 (このIDを非表示/違反報告)
いろえんぴつ(プロフ) - 私は15年しか生きていない高1です。(笑) (2018年8月1日 20時) (レス) id: c175a64265 (このIDを非表示/違反報告)
岡本 珠理奈(プロフ) - いろえんぴつさん» ありがとうございます!はい笑、まだ16年しか生きていない高1です……笑。コメントありがとうございます!これからもがんばりますね! (2018年8月1日 18時) (レス) id: 05e4939074 (このIDを非表示/違反報告)
いろえんぴつ(プロフ) - 完結、お疲れ様です!!高校生だったんですか!?これからも頑張ってください (2018年8月1日 17時) (レス) id: c175a64265 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:岡本珠里奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hsjkei1/
作成日時:2018年3月25日 18時